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「はぁっ……はっ……」
「……大丈夫か?」
「うーん…微妙………かなぁ…」
昨日入り込んだ、元・入っては行けない場所。
あの後あそこら辺をしっかり散策すると、さらに四つの庵への入り口を発見した。つまり合計で五つあったわけだが…これは結構な量らしい。なんとなく想像はついていたので、刹那はそれほど驚きはしなかった。ただ納得しただけだ。
そして今いるのは、最後に見つけた庵。
一見行き止まりに見える壁…まぁ、実際に行き止まりなのだが、そこに入り口があった庭園風の庵の中に自分たちはいた。
石造りの大きなベンチの上に寝転がって肩で息をしているアレルヤは、どうやら全力疾走して来たらしい。何でも昨日のことに関係する事柄を口走り、ロックオンとソーマに追いかけられたとかいう話だそうで。
逃げるのなら裂け目を作って来れば良かったのに、と思わなくもないが……必死なときほど頭は回らない物だ。どうでも良い必死さの中だと尚更のこと。だから仕方なかったのだろうと思って言ってはいない。言えば彼を落ち込ませる気がしたから。それは本意ではないのだ。
椅子に座っていた刹那は、一本足の丸テーブルに置いてあった紅茶を取って飲む。……なかなか美味しい。だが、この紅茶はどこで淹れられたのだろうか。見たところ、この庵にキッチンは無さそうなのだが……まさか自分たちのように『彼ら』が庵の外で行動するわけにもいかない。
と、ここで、その『彼ら』の姿が見えないことに気づく。アレルヤに意識を集中させていたから気づかなかった。
一体どこに……と見渡してみると、垣根の向こう側に黒色の頭とオレンジ色の頭が見えた。二人発見。
刹那は発見した二人に声を掛けた。
「エクシア、キュリオス。そこで何をしている?」
「…アレルヤの分の紅茶を持ってきた」
「けど…ここの垣根って迷路みたいだから…どうしようエクシア、出れないかも…」
「それはないよ」
そう言って起き上がったアレルヤが垣根の方へと歩み寄り、腰の高さがあるかどうか、という垣根の向こうへ身を乗り出した。
「やぁ、おはよう。二人とも」
「おはようアレルヤ!」
「…あぁ」
キュリオスを抱き上げてこちら側に移したアレルヤは、次にエクシアも同様にした。運ばれている最中にキュリオスは見るからに嬉しそうに、エクシアは憮然としながらも若干嬉しそうにしていた。気持ちは分かる。何と言っても相手はアレルヤだ。
アレルヤの腰までくらいしか背丈のない二人は、昨日自分たちが見つけた人形である。眠っていた彼らの内、一番最初に起こしたのがキュリオスだったのは果たして良かったのだろうかと……今でも少し思うところがある。気が弱すぎる彼は、自分たちの姿を見た瞬間に……いや、これ以上は止めておこう。
彼の案内で次の庵を見つけ、そこでエクシアを発見した。
半袖で太ももの真ん中あたりまでしか裾がない状態にしてしまった着物を着、その下に半ズボンをはいている彼もまたベルトを斜めに着けていた。背はキュリオスと同じ程度。髪は黒くてショートカット。ただし頭のてっぺん辺りで一房分ほど、髪が寝癖のように跳ねているのが特徴的だ。目の色は碧色で、彼らは全員瞳だけは同じ色だ。あと肌も。
彼の姿で最も特徴としているのは、背に背負う大剣だろうが。
はい、と笑顔で手に持っていた紅茶をアレルヤに渡すキュリオスを見ながら、刹那はエクシアが持ってきてくれていた紅茶を再び飲んだ。
やっぱり美味しかった。