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「お、アレルヤも来たんだな」
「茶菓子を持ってきてやったぞ。ありがたく受け取れ」
そう言いながら垣根から迷わずに現れた二人の人形に向かって軽く手を降ってみせる。
……にしても茶菓子、どこにあったのだろうか…。
「お帰りデュナメス、ヴァーチェ!」
「キュリオス、何故俺を先に呼ばない」
「え?えぇと……えっと……」
「ヴァーチェ、あまりキュリオスを困らせんなよ」
少々憮然としているヴァーチェに、必死で理由を考えているキュリオス、苦笑しているデュナメスと……我関せずに見えるが注意は払っているらしいエクシア。
四人のやり取りを眺めながら、アレルヤはクスリと笑った。小さな彼らを見ていると、何だか微笑ましい気分になれる。
デュナメスは四人の中で一番背が高い。ロングコートを身につけていて前は開いており、その下は長袖長ズボンの姿。あと、斜めに付けられているベルトがコートの隙間から見え隠れしている。髪の色は茶色でクルクルと巻き毛で、少しばかり長いらしくて首筋で括っている……といっても、解いたところで肩の少し下くらいだろうが。同じく括っているキュリオスは解けば背中全体を覆いそうなところ、やはり違うなと。
ヴァーチェはチャイナ風の服を着ている。彼にも当然のようにベルトは着けてあり、どうやらこれが彼らの統一された特徴らしい。それは置いておくとして、髪の色は赤色で、長さは肩に届くか届かないか。眼鏡を着用しているところはティエリアそっくりだ。
あとこれは彼ら全員に共通するのだが、細くて白い。
「……平和だな」
「だねぇ。昨日の騒動が嘘みたいだよ」
「同感だ。が……何故、あんなに庵が固まっていたんだ?」
刹那の問いに、アレルヤは腕を組んで考え込んだ。
こういうことは滅多にないのだ。昨日見つけた庵を合わせると、今知っている限りではこの町の庵は計七個。庵が一つもない町があっても不思議でないというのに、一つの場所にこれだけ固まっているのは……正直、異常と言わざるを得ない。
「なんていうか……この町に庵がたくさん、っていうより『この屋敷に』庵がたくさんって感じなんだよね…まるで何かに引き寄せられてる見たいに」
「何か、とは」
「そこまではさすがに。ティエリア辺りなら推測できそうだけどね」
ただ、推測してもらうには庵がこれだけあると、昨日見つけた五個の庵の存在を教えなければならない。一つの町に二つというのは、まだ許容範囲なのだから。
しかし……
「…言うなよ」
「分かってるよ、ヴァーチェ。君たちが良いと言うまで黙ってる」
「分かっているなら、良い」
ついと視線を逸らされて、アレルヤは苦笑した。刹那は呆れているようだが、ヴァーチェの不遜とも取れる態度に腹を立ててはいないらしい。
当然かも知れない。自分たちは昨日彼らを全員起こして、彼らのことを聞いたのだから。
その上で彼らの了承無く話す気にはなれなかった。
「まぁ、時間はある。お前たちがアイツらを悪人でないと確信できるようになって、それからでも紹介は遅くないだろう」
「時間……あぁっ!刹那、時間はないんだよ!明日なんだって!」
「……まさか、都に行く日取りか?」
「そう!今の今まで忘れていたけど……」
どうしたらいいのだろう。まさか四人をのけ者にしておいていくワケにもいくまいし……だからといって、堂々と連れて行くのも問題だ。まだ彼らは会いたくないと言っている。慎重なヴァーチェは特にそうだし、他の三名も程度の差こそ有れ、躊躇っているようだ。
アレルヤは刹那と共に悩み、途中から四人の人形たちも加わって解決策を模索して……一応の案が出たときには一時間弱ほど経っていた。