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「で、君たちはどこにいたんだ」
「…屋根の上だが」
「ずっとか?違うだろう。そこに行く前にどこにいたのかと、俺はそう訊いている」

 夜、食堂にて。
 ティエリアは腕を組み、昼の間に消息不明だった二人の前に立っていた。
 椅子に座っている両者の内、アレルヤはオドオドとしているのだが、刹那はいつもどおり……むしろ今の方が反抗的なくらいで、それが何とも苛つくのだがそれはさておき。

「……とにかく、俺が言いたいのは屋敷中をくまなく探したというのに、どうして君たちを見つけられなかったのかと、そういうことだ。……どこにいた?」
「外に出ていたという選択肢は」
「有り得ないな。庭をいじっていたハレルヤが、君たちが出て行くのを見ていない。それどころか、屋敷内で突然気配が消えたという証言まで出したが?」

 ハレルヤの気配を察知する能力は信用に値するレベルだ。半径数キロは彼のテリトリー内であり、外れたことはほとんど無い。努めて消すにしても限界があり、出来たとしてもグラハムぐらいの腕前がなければ難しいだろう。
 そして、目の前にいる二人にそこまでの腕はない。

 つまり彼が言ったことは正しく、二人は屋敷内にいながら突然に姿を消してしまったと、そういうことになるのだ。

「それに……さっきからアレルヤが喋ってないのも気になるがな。アレルヤ、言えないことでもあるのか?」
「っ……無い…よ」

 びくりと震えたアレルヤに、ハァと溜息を吐く。
 今回は行幸だが、いい加減……というか何というか。二十歳にもなって嘘の一つも付けないのは如何様なものだろう。

 彼は語らないことは得意だが、嘘を吐くのは苦手なのだ。現段階ではどちらかというと『語らない』方寄りの状態だから良いものの、彼が話す側になれば……すぐにでも真実を暴ける自信があった。

「何があったか言ってみろ」
「えっと……えと…」

 目を泳がせている様はあからさまに『嘘を吐きます』あるいは『隠し事があります』と伝えてきている。
 基本的に感情がすぐに出てしまう彼なのだ。付き合いの長い自分にまで、隠し事が続くと思ったら大間違いである。

「言えないのか?」
「……うん、言えない」
「…何?」

 予想外の言葉に思わず聞き返すと、彼は困ったように微笑んだ。
 それを見て、舌打ちしたい気分になった。

 彼は隠し通すことにしたようだ。ここまでハッキリと言われてしまうと、何を訊いても『言えない』という返事が返ってくるのは容易に想像が付いてしまう。だから、ティエリアは何も訊く気がなくなる。

 相手を知っているのは何もティエリアの方だけではない。アレルヤだって自分のことを知っているのだ。
 だからこその、この返答。

「残念だったな、ティエリア・アーデ」
「ごめんね…?そのうち、言えるときになったら言うから」
「……まぁ、いずれ必ずと言うならば」

 ティエリアは、勝ち誇ったような顔の刹那が腹立たしかったが、ここは申し訳なさそうなアレルヤの表情に免じて引き下がることにした。

 それから、ふと思い出した。
 ハレルヤは、どこで気配が消えたかを結局話さなかったなと。
 そのくらい、分かっていただろうに。
 

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