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「……ねぇ、今回の人たちはどうかな…」
「刹那とアレルヤか…今のところ、問題はないようだが」
「フン……簡単に信用してなるものか」
「ってもヴァーチェ、お前結構楽しそうだったけど?」
四人きりになった庵で、人形たちは大きな石のベンチに腰掛けて話していた。
会話の内容は、これからのことについて。
「まぁ…前回よりは確実にマシだとは思う」
「エクシアも思うか?前のヤツは凄かったよな……ご主人様と呼べ、だっけ?」
「あと、勝手に動くなだったか…」
「……怖かったよね…」
キュリオスがカタ、と震えると、よしよしとエクシアが頭を撫でる。
前の時の一番の被害者は誰だったかといえば、それはおそらくエクシアになるだろうが、そのエクシアを見て誰より傷ついたのはキュリオスだ。
前、四人を起動させたのはあまりに酷い人間だった。
過酷な労働、少なすぎる休憩時間、仲間と会うことさえ制限されて。
ちゃんとした生活とも言えない生活が送られ。
リーダー格のデュナメスと、不公平は気に入らないというヴァーチェはよく、その人間と口論をしていた。キュリオスは恐ろしくてそんなことは出来なかった。エクシアは、そんなキュリオスの傍にいることが多く、気が弱い彼を支えていた。
ある時、その人間がキレた。
キレて、キュリオスに八つ当たりをしようとした。
そして。
突然のことで固まっていた彼を庇い、エクシアが変わりに傷を身に受けた。
その後も、何でもないと常時のように無表情で言う彼だったが、だからといって庇われた方が納得できるわけもなく……そのままなのだ。心に負ったキズは。
その前から、四人に対する他の持ち主の扱いは酷かった。
ある者は忌み、ある者は厭い、ある者は見もせず、ある者は道具として扱い、ある者は単なるストレス発祥の場として。
誰も、ちゃんと扱ってはくれなかった。
扱ってくれたように見えた誰かも、結局は『コレクション』としか見ていなかった。
自分たちは『自分たち』として見て欲しいというのに。
「大丈夫なのかな……信じても」
「俺たちを屋敷に置いていくことに抵抗があったようだが……それが果たしてどのような気持ちからの思いなのか、それが一つの着眼点だな」
もしもそれが、ただ『近くにコレクションを置いておきたい』からだとか、屋敷に置いておくのが不安だとか、そういう物だったら……とりあえず、信用してはいけない。が、それが申し訳なさだとか、そういう所から来る物なら……信用しても構わないだろう。
「…あ」
「エクシア、どうかしたか?」
エクシアの呟きに、デュナメスが反応する。
呟いた本人は今更の事と思っているようだが、言葉を続けた。
「そういえば……晩飯はどうするんだ?」
「……あぁ、食べてないな」
「今日はもう来れないかもって言ってたし……自分で取ってくるしかないの…?」
しかし、今、本当に信用できるかも分からない人ビトがいる所へ出るのは抵抗がある。
さてどうしようと四人で頭を悩ませていると、ふいに、昼間は刹那の紅茶が載っていた机、そのやや上の部分に亀裂が入り……つい昨日出会ったばかりの暖かい手がそこから伸びて、ことりとサンドイッチの乗った皿をそこに置いた。
亀裂が閉じ、手が居なくなった後、四人は顔を見合わせて頷き合った。
今回の彼らは、もしかしなくても大丈夫……かもしれない。
一応、第一ステップはクリアしていると考えよう。
なら……もう少し、信用してみてもいいかもしれない。