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久々に更新。
もう少し続きます。
「う……」
「…起きたか」
「ここは…?」
ベッドの上でキョトンとした表情を浮かべているデスサイズを見て、思わずというか……自然と溜息が出た。ここは?…じゃない。あんな所で倒れかけて、自分が見つけたから良いものの、もしも変な誰かに連れ去られでもしたらどうするつもりだったのだろうか。
いや……それでも良かったのかも知れない。目的は仲間から離れてしまう事だったようだし、出て行くという選択をしてしまう今の彼ならむしろ、そちらの方が好都合とさえ考えかねなかった。
まだハッキリしないのだろう、熱の下がっていない頭を軽く振りながらも、何とか現状を把握しようとしている彼を見る。
「倒れた原因は風邪の悪化らしいが……どうやら治ったようだぞ」
「さすが死神体質……こーいうときは感謝だよなぁ…」
「にしても…全く……唐突に消えて、他のがどれ程心配したと思っている?少しは考えて行動を……違うか。そんなに深く考えずに行動してみろ」
考えすぎて、変な方へ思考が行ったのだろう?
そう続けると軽く睨まれて、ふいと顔を逸らされてしまった。
どうしてこんなに今回は聞き分けがないのか…と呆れていると、ポツリと呟かれた言葉がスルリと滑り込んできた。
「…できるわけないだろ」
その言葉は酷く重く、暗い。常時の彼からは想像がつかないほどに。
……やはり、考えすぎが原因だろう。普段はそれほどではないようだが、たまに『仕事』との関係について考えて、そのせいで深く沈み込む事は以前も数回あった。今回はそれがいつもよりも酷いということだろう。
小さな死神の様子からそう断定して、断りも入れずに彼の隣に座る。
チラリと何を、という問うような視線を感じたが応えず、変わりに勝手に言葉を紡ぐことにした。
「お前がいなくなって、他のがお前を探している。マグアナック隊まで引っ張り出すところ、どうやら事態を深刻に取っているようだな」
「へぇ……」
返ってきたのは無感動な返事。
だが、それを気にせずに言葉を続ける。
「誰も彼も心配しているようだし、焦ってもいるようだが…程度の差こそあれ、全員が怒りを抱いているようだと私は思うのだが」
「……家具、壊したからな…」
彼の言葉に、少し驚く。
「まさか…それだけが彼らを怒らせていると思っているのか?」
「それ以外だったら何の理由があるんだよ」
不思議そうな表情で、デスサイズは聞き返してきた。
心の底からそう思っているらしい彼を見て、溜息を吐く気はなくなった……が、変わりに頭が痛くなってきた気がする。自分のことは家具の次、という考え方……どうして、そんなに自分の存在を過小評価しているのだろうか、この死神は。
「……な、どうかした?頭が痛いのか?」
頭を抱えていると、横から心配そうな声が響いてきた。
ああ、やっぱり分かっていない……と少々絶望しながらも何とか気を取り直す。
「…そこは、他のに訊けば分かることだろう」
「っ……オレは戻らないからな!」
「全員が『お前を』心配していると言ってもか?」
その言葉は。
その言葉は、どうやら彼にとっては想定外の物だったらしい。
驚きの余りだろう、固まってしまったデスサイズを眺めながら、畳み掛けるように言葉を続ける。ここが攻め所だ。
「しかも、速く見つけなければという焦りを理性で制御して、実に効率よく作業を分担して探している。早くお前に会いたいから、だそうだ」
「っ…けど、その焦り…?って、制御できるレベルなんだろ。それなら、それ程心配ってワケでもないんじゃ…」
「違うな」
そうじゃない、と首を振る。
じゃあ何、と食いついてきた彼に、一言。
「その焦りは、制御する必要があるほど大きいと言うことだ」
放っておいたら空回ってしまうくらいには確実に。もしかしたら焦りすぎて、普段とは全く違う行動を起こすことがあるかもしれなく、間違いを選択して気付かないくらいにも。
「でもっ……」
「…これ以上は、私が言っても意味はないか」
動揺しながらも未だに信じられないと言っている瞳を見て、小さく嘆息。
「本当かどうかは、これからお前の仲間にあって訊けばいい」
「オレは戻らないって……っ」
「だが、このまま去れば後悔だけが残るぞ?」
一回でも食いついてしまったのだから、この問いの結論を得ない限りは……ずっと気にすることになるだろう。そして、それを彼が良しとするとは思えなかった。
そこが分かったらしい。グッと言葉に詰まり、デスサイズは軽く俯いた。
「……ズルくないか、そう仕向けるのって」
「だが、そうでもしなければお前は行くだろう?」
「…あー、ヤダ。ホント、アンタみたいな大人にはなりたくないな……トールギスⅢ」
そして、上げられた顔は苦笑ではあったが久しぶりに見る笑みで、少し、嬉しく思えた。
だから笑いながら答える。
「余計なお世話だ」
雨は、少し小振りになっていた。
拾って帰ってくれたのはトールギスⅢでした。