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あと一週間ちょい、ですね。
あぁ、二期が楽しみすぎます…!
今回はティエさんとアレさん。
12.必要?
「ねぇ……ティエリア」
「何だ?」
地上でのミッションを行わなければならない不機嫌さと、アレルヤと一緒にいるという機嫌良さが見事に混ざって若干だが機嫌の良いまま、本から目を離さずに答える。
今回は何だろう。買い物に行こう、散歩に行こう……どちらかだろう、多分。外は晴れているようだし、こういう日は俗に言う『お出かけ日和』というものだろうから。まぁ、そんな事はティエリアにはあまり関係ないのだが。どうであったところでとにかく室内に籠もっているつもりだから。
しかし、彼の口から出たのはもっと別の、とても大切な事だった。
「僕は、マイスターに相応しいのかな……?」
ピタリと。
その言葉はティエリアの行動を止めるのには十分すぎるほどの威力を持っていた。
思わず本から顔を上げて彼を見やれば、アレルヤは、どこか泣きそうな顔をしてそこにいた。…相当思い詰めているようだ。
さて、何か原因があったかと近日中のことを思い出してみる。
宇宙から地上に降りたのが昨日のことで、その時にはあまり変わった様子は見られなかった。というか、今の今まで普段通りだったように思う。
もしも何かあったとしたら読書に熱中していた時。
「…一体、何があった?」
「何もなかったよ…けど、ね……ふと、考えてしまったんだ」
「何を?」
「僕って……存在自体がCBの理念に反してるんじゃないかって」
それは、と言いかけたところで口をつぐむ。
つぐまざるを得なかった。
何故なら、アレルヤが続きを話し出したから。
「僕は戦うための存在だ。戦うために生み出されて、戦うために生きて、戦って死んでいくようにと作られた存在……戦う事しか出来ないんだよ…。なのに、僕は戦争の、戦いの無い世界を作ろうと動いていて……戦争を否定する組織に、戦うことが存在理由の僕がいて、いいんだろうかって…思って、しまって……」
不安だったのだろう……全てをはき出してしまった彼は小刻みに震え始めた。心内に止めるのではなく、自分でも分かるような形で表してしまったために、その不安はさらに強く大きな物となってしまったのだろう。
小さな子供のようだと、ティエリアは感じた。
小さいだけではなくて、迷子の子供。どこが帰るべき場所なのかが、見えていても分からない子供。迷いすぎて本当の道を進んでいても分からない子供。
馬鹿だ、そう心の底から強く思う。本当に、馬鹿。
間違ってなんていないのに、一体どうして『自分が間違っている』という思考へと至ってしまうのか。帰るべき場所にいても、そこが自分の居場所なのかと疑ってしまうなんて。ちゃんと正しい道を選んでいるのに、それさえも自信が持てないなんて。
本当に……馬鹿。
答えなんて、始めから出ているのに。
溜息を吐いて、本を閉じる。
それから本当に泣きかけのアレルヤの視線に目を合わせて、ティエリアは尋ねた。
「……訊くが、君は後悔しているのか?」
「……?」
「自分の存在を否定するような組織にいることを。自分の存在で否定してしまうような組織にいることを。そして……俺たちと共に戦うことを」
「まさか!」
そんなこと……と慌てた様子の彼を見て、フンと鼻を鳴らす。
「ならばそれが答えだ」
「……え?」
「何度も言わせるな」
もう話すことはない、と再び本を開いて読書を開始する。
その間際、ちらりと見た彼の顔は笑顔だった。
「……ありがとう、ティエリア」
そして降ってきた言葉は、何だかとても暖かかった。
少しシリアス風味で。
ティエリアの慰め方は、不器用っぽかったらいいなぁとか。