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「あの子たちと会うなんて、いったい何年ぶりかしら?」
「確か……前回パーティに招待したのは二年前でしたか」
「来なければアカデミーの在籍を抹消させてもらう……ふふふっ、我ながら良い脅し文句だと思うのだけど…紅龍、貴方はどう思いまして?」
「…後の報復さえ考えなければ、確かに良い脅し文句ですが」

 二年前、今回と同じように『絶対に来なければならない』という招待状を送って、来てもらったのは良かったのかも知れないが……その後、つまりパーティが終わった後だが、ティエリアから報復という名の愚痴があったのだ。

 当然聞くのは自分。まさか留美にそんなことをしてもらうわけにはいかないし、その時彼女はアレルヤとノンビリしていたから、そこからティエリアの相手は無理な話だったわけなのだが。

「お嬢様……やはり、パーティ参加条件が問題では…」
「ティエリアが嫌がる理由かしら?……えぇ、それもあるかもしれないわね。けど、」
「?」
「面白いんですもの」

 屈託無く笑う留美。
 ちょっとそれは……と思ったが、まぁ実問題はないので別に良いかと思い直す。
 常識はあるが、紅龍の思考の指針は常に留美なのである。

 これは孤児院にいたときから変わらず……いや、いたときに定まった事柄である。どうしてだか自分たちは一緒に行動することが多く、そして彼女が王家に引き取られてからこの関係は確定したと言っても間違いではない。

 養父母が亡くなって莫大な遺産を得た留美は、ここ、都で生活をしている。
 他の富豪や有名人、博識な教授などと交流する彼女の目的を知っている誰かは、果たして『身内』以外にはいるのだろうか?

 いないだろうと断言できる、そう紅龍は思う。
 そして、誰かに言ったところで、この行動への本心からの同意を他人からは得られないだろうことも。

「紅龍」
「何でしょう、お嬢様」
「アカデミーでの研究の状況はどうでして?」
「今のところ進展はありません」

 もしもアレが完成してしまったら、人間は、犯してはならない過ちを犯す。
 何故ならそれは強大で、人間というのは、強大な何かを手にしてしまえば使わないという選択肢を選べない生き物だから。

 きっと、それが行われた世界は。
 仕える主たる彼女の『目的』からは大きく逸れる。

 それは……人間が手を出してはならない領域なのだから。
 人間はこのままでいなければならないというのに、むしろこのままでも十分な力を持っているというのに……何故、飽き足りもせず。

「紅龍」
「何でしょう」

 二度目の呼びかけに、二度目の返答。
 ついと視線を転じた彼女の表情は見えない。

「もしも彼らが間違ってでも完成させてしまったら、」
「分かっています」


 その時は―――

 

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