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そして翌日、一行は出発することになった。
移動手段は事前にカタギリが手配していたという馬車が三台ほど。どうやら四人乗りらしいので四、四、五…という割合で乗るのだろう。
となると問題は誰が五人組に入るかということだが。
「一応『恋人』なんだし、ティエリアとアレルヤは一緒に乗った方がいいと思うけどねぇ」
「カタギリ、やっぱりなんだね…ていうか今この姿で言うのも何だけど、変身後の姿で乗らないといけないんだね……いや、予想してたけど……けど…」
「誰に見られるとも分からないしな。都滞在中はずっとその姿だぞ」
既にハレルヤがデザインした姿でスタンバイしている(=不本意ながらも女性の姿に体を変化させた後。ついでに言うと既に黒いドレスを着用)アレルヤは、じとっとティエリアの方を見た。心情としては…同じ思いを味わってごらんよ……というところか。
だが視線を受けたティエリアに堪えた様子はない。不適に笑ってさえいるところを見ると、反省の色は全くないようだ。これは、こういったことがある際の常套手段のようだし、そう言うところからして気にしようとは思っていないのかも知れない。
ここで他の女性陣に頼んだりしないところ、本当にアレルヤが好きなんだなとか……というか、そんなに彼女らに頼むのが嫌なのか……と思ってしまうのだが、まぁ、あながち間違ってはいないのだろう。
とまぁ、それは置いておいて。
「そういやアレルヤ、お前さ…何で朝っぱらからその格好だったんだ?」
「え?ロックオン……何?」
「嫌ならギリギリまで元の姿でいりゃ良かったんじゃないのか?」
「えっと……うん…まぁ、何というか……」
僅かに視線を逸らして言う彼の様子に、あぁ何かあったんだなというのは容易に想像が付いた。屋敷の主が言うように彼は本当に分かり易い。
ただ……様子からして、どうやら彼自身も何がどうなのか、というのを正確に把握していないようにも見える。他人に説明する自信もなさそうだ。
「オイオイ……なんかの後遺症かよ?」
「んー……本当に分かんないんだけど……ね、突然年取るってあると思う?」
「は?何だよそりゃ」
「僕だって分からないから訊いてるんだよ、ハレルヤ」
……という双子の会話から推測するに、どうやらアレルヤは一晩で年を取ってしまったそう……なの、だが。
「んなことって有るのかよ……」
「あぁ、貴方は知りませんでしたか。ここは時間の流れが他とは違うのです」
「違う?ねぇねぇ、それって何が理由なの?」
「え……その…」
迂闊にミハエルの問いに答えてしまったソーマが、ネーナからの質問を受けて口ごもっている。一概にそれ、と言うことも出来ないしトップシークレットも混じっているから……不用意に言えないというところか。
確かに、この屋敷の事情からしたら有り得なくはないかもしれない。そもそも人間なのに特殊能力を持つ人物がいたり、異端と仲良くする狩人(自分のことも含まれるが…)がいたり、魔王がいるが存在していなかったりと……大分、複雑だ。
「…あの、一つ訊くんですけど……」
「どうかしたのか?佐治君」
「字が違いますよ、グラハムさん……えっと、刹那君…は?」
「あぁ、彼なら私が起こしに行ったのだが…扉を開いてはくれなかったよ」
「当然だな…で、どうして君が起こしに行ったんだ…」
ヨハンの冷静なツッコミを気にするでもなく笑うグラハムを見て、自分の傍でカタギリが頭を抱えていたのだが……もう同情しかできない。同じ保護者属性の身としては。
そして噂をすれば影、である。
ギィと扉が開く音がしてそちらを見……固まった。
「すまない、遅くなった。ところで…こうなった原因を誰か知らないか?」
いたのは刹那。それは当然。さっきまでで屋敷にいたのは彼以外ではいないはずだから。
ただ、問題は彼が少年から大人になっていることだった。