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途美学園で、三年生sの話。
そしてコーラが可哀想。
いつものことだけど。
17.あと1センチ
「もーちょっとだと思うんだよ」
「……何がだ」
殺気はどうにか押し殺し、不機嫌だけは丸出しでティエリアは頬杖をついていた。
全く、どうして貴重な昼休みの時間を、こんな馬鹿のために使わなければならないのだろうか。この、時間が経てば気の抜けてしまいそうな炭酸のために。バカバカしくて涙が出そうだった。
だが、さすがは炭酸と言うべきだろうか…コーラサワーは自分の不機嫌さに気付かないようで、普通に言葉を続けてきた。
「大佐に弁当作ってもらえるようになるまで」
その言葉に首をかしげたのは、ティエリアではなくマリナだった。
彼女もまた犠牲者である。
経緯は知らないが、コーラサワーと共に自分のクラスまで弁当を持ってくるという労働を強いられてしまったという、同情に値するルームメイトだった。まぁ、確認はしていないが……今日は刹那の元へ行くとか言っていたので、これが自分からの行動ではないというのは想像が付く。
「炭酸、質問なのだけど…大佐って、マネキン先生よね?何で大佐なの?」
「え?そりゃ大佐っぽいから」
「馬鹿の解答だな」
フン、と鼻で笑って水筒のコップを手に取った。
「どうせ、それも貴様の幻想でしかないだろう」
「そんなことないって!こないだはジュースおごってもらったし!」
「確かそれって、貴方が先生の仕事を手伝った駄賃だったと思うけど」
「見ろ、やはり幻想だ」
というか実問題、教員一同それぞれ弁当を注文していたりするので、果たして話題の中心にいる彼女が弁当を作っているかが不明なのだが。
多分作っていないだろうと思いながらも、面白そうなのでそこは黙って茶を口に運ぶ。
「じゃあ訊くけれど、もう少しって、お弁当を作ってもらえるまであとどのくらいなの?」
「一センチくらい」
「コーラサワー、それは一メートルの間違いだろう」
「いいえ、ティエリア。一キロの間違いかも知れないわ」
「そちらの方が近そうだが……果たしてその程度で済むのか?」
実際は一億キロくらいは離れていそうだが。
そう思いながら言ったのだが、マリナはとんでもないという表情を浮かべた。
「ティエリア、それは間違いよ」
「……何?」
「一メートルでも実は一キロでもないし、一億も違うわ」
…一億というのは口に出していないのだが、相手がマリナなので気にすることもないだろう。学園の中でも数少ない、ティエリアが同等あるいは格上と認めている彼女は人物の一人なのだから。
つけくわえると、この場にいるもう一人…炭酸はピラミッドの底辺である。
いや、底辺というのも大目に見すぎだろうか。気分的にはピラミッドの地下あたりなのだし。
……話を戻そう。
「では実際は?」
「一兆キロ以上」
静かな、それは断定だった。
数秒その言葉を噛み締めて、一言。
「成る程」
「ちょっと待てーっ!?」
突然叫び声を上げたコーラサワーを、何か文句があるのかと睨め付る。
浴びせた殺意にもめげず(気付かなかったのかも知れないが)、彼は続けて叫んだ。
「何でどんどん距離が広まってくんだよ!」
「黙れ。事実を言って何が悪いんだ?」
「そうよ。それに、次元の裂け目が横たわっているとか、住んでる世界が違うのだと言わないだけ、まだマシなものでしょう?」
「お前ら……酷くね?」
がくりと力なく机に突っ伏したコーラサワーを見て、ティエリアはフッと笑った。
「何と言われようと、これが事実だ」
コーラが可哀想…。
けど、この二人が本気になったらこれ以上なので…ね?