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こういう、平和なときもあったんだろうな…
沙慈とルイスの話。色お題なので一期です。
07.泣き寝入り
「じゃあ、次はー」
「ね…ねぇ」
「ん?どかした、沙慈」
「どかした、じゃなくてね……」
財布の中を見ながら、沙慈は溜息を吐く。
「まだ買う気なの?……しかも僕のお金で…」
「とーぜん。こういうときは、男の子がお金を払うものなんだって」
「だからってこれはやり過ぎだよっ」
事の始まりは何だったか……何でもいい気がする。
とにかく一緒に町に行こうということになって、フラフラと歩いている内に、いつの間にか買い物になっていたのだった。
しかも、ほとんど一方的にこちらの資金が削られていくような買い物。
バイトで貯めたお金は、貯金している分を除くとほとんど無くなっていた。
「……給料前で良かったよ…後だったら、それが全部消えそうだ…」
「何か言った?」
「何でもないよ、ルイス」
「そう?あ、次は沙慈のバイトの給料出たら行こ」
「心が読まれてる!?」
…まぁ、付き合いが長いのもあるから、このくらいだったら有り得なくは無い……かもしれない。何だか自信はないけど。
最早溜息を吐くことさえ出来ずにガクリと肩を落としていると、隣を歩いていたルイスが何かを見つけたらしい。あ、と小さく声を上げて、それから沙慈の腕を引っ張って細い路地の方へと入っていった。
「ル……ルイス?」
「黙って。えっと…殺那だっけ誰だっけ……」
「あぁ、刹那君?…ていうか殺那って…」
「そうそ、その子がほらあそこに」
指さされた先には確かに刹那がいた。
それから、傍には茶髪の男性の姿。たまに『刹那の食生活が心配で』と彼の部屋を訪れる人で、名前は……そう、ロックオン。
その二人は、スーパーの袋を持っていた。
ロックオンの方は色々な物が入っている。野菜とか肉とかカレー粉とか。多分今晩のメニューはカレーだろう。というかあの内容でそれ以外だったら驚きだ。
刹那の方は……あれは何だろう。袋一杯の赤はどうやらリンゴのようだが…。
「あんなにたくさん、どうやって消費するんだろう…」
「二人で食べるにも多すぎだよねぇ…あ!他の誰かが来るとか?」
「あぁ、そうかもしれないね」
ということは、今夜は隣が騒々しくなるかも知れない。二人だけの組み合わせの時は(一部例外を除き)案外大人しいのだが、三人以上になるとそうも言っていられない。騒々しいを追い越しているような騒ぎで、何だかじゃれ合いと言うよりむしろ修羅場な感じがヒシヒシと伝わってくる。
何が起こっているのか、あまり知りたいとは思わなかった。
などと思っている間に二人は去っていった。
「行っちゃったね」
「ねぇ沙慈、私リンゴ食べたい」
「えぇ?」
「これで最後にするから」
「…まぁ、それなら」
そろそろ財布が危ないのも事実だし、彼女が言うのならそれに甘えさせてもらうことにしよう。ここで反論でも何でもすれば、間違いなく事態は悪化する。
だが、そんなことをしなくても状況は悪化の方向に進んでいたらしい。
ルイスは路地から出て振り返って、ニコリと笑った。
「残りのお金、ありったけを使って買えるだけ買ってね?」
嬉しそうにリンゴを囓っているルイスを見ながら、荷物を持ってトボトボ歩く。
……結局買ってしまうところ、彼女に甘いなぁとしみじみと思う沙慈だった。
ともあれ財布は完全に空。
今日は…少し泣こうか。
何かこのサイトではリンゴ出現率が多い…