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「えっと……刹那、こちらの人は?」
「マリナ・イスマイール。俺の故郷の皇女にして…」
「刹那の親類よ。よろしくね…えっと……」
「アレルヤです。こちらこそよろしくお願いします」
お互いにペコリと礼をしあっているアレルヤとマリナ、傍で青くなっている刹那を見て、ソーマは軽く首をかしげた。何で刹那が青くなっているのかが分からない。親類と言うからには、そして長年祖国を離れていながらも直ぐに誰かを気付いた彼女なのだから……ある程度は親しいはずだ。それに大人しめに見えるというのに。
親しいだろうから、彼女のことはよく知っているだろう。ということはあるいは、大人しく見えるがどこかが変だとか……そんな感じかも知れない。
関係性として例えるなら、この場合はティエリアとハレルヤにとってのグラハムである。
だが……そうは思えない。
むしろ刹那はマリナを恐れているようにも見えるのだ。
一体…と不思議に思っていると、隣から声がした。
「貴方の名前は?」
「ソーマ。ソーマ・ピーリスです。…貴方は?」
「私はシーリン・バフティヤールよ。シーリンで良いわ」
「では私もソーマで良いです。ところで……あの反応は」
ちらりと刹那へと視線を向けながら問えば、あぁ、という風にシーリンは頷いた。
いつものこと、らしい。
「あの子、姫様が苦手らしくて……まぁ、気持ちは分からなくもないけれど」
「苦手?怖いの間違いでなくて?」
「正確に言うと、どっちもなのかしらね」
言いながらも遠い目をしている彼女を見て、気付く。
……これは、あまり触ってはいけない話題だ。
では、と話題転換もかねて、先ほど示唆した喫茶店の方を指さす。
「立ち話もなんですので、あちらに入りませんか?」
「賛成だわ。あ、経費は私たちが持とうと思うけれど良いかしら?」
「そんな!むしろ僕が払います!」
「そんなに遠慮しないで。私は一応一国の皇女なのだし……それに」
「それに何だ、マリナ・イスマイール…」
疲れたように言う刹那に、悪戯っ子のような笑みを浮かべてマリナは答えた。
それこそ世間話をするかのように。
「だって、下手したら貴方たちは私に関わったことで危険になるもの」
「…………はい?」
聞き返したのはアレルヤのみで、刹那は元から推測していたらしいし、シーリンは言うまでもなく。そしてソーマもまた、あの笑みを見たときから何となくは分かっていた。
そんな各々の様子を見ながら、皇女は言葉を続ける。
「私の国は今、結構危ない状況なの。まぁ、昔よりは落ち着いているけれど。……で、都でのパーティへの招待状が来たから丁度良いって事で、私たちに反感を持つ誰かをあぶり出すための罠にしてみたってこと」
「敵をおびき出すために、自ら囮になったか…」
「そうよ刹那……見直した?」
「別に」
そっけない返事にも微笑みながら、マリナはアレルヤと自分のの手を取って、店の方へと歩き出した。
「さぁ、ケーキでも食べましょう?」
「…私はパフェが食べたい気分です」
答えながら、思う。
…この人は強者だ。