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煙がモクモクと溢れ出ている店を見ながら、ネーナとミハエルは互いに顔を見合わせて首をかしげた。何があったのだろう?
ネーナは手に持っていた小物類をミハエルに預け、近くを歩いていた老人の肩を叩いた。
「ね、何があったの?」
「何やら爆発騒ぎがあったようでの。全く…嫌な時代になったものじゃ」
「爆発ぅ!?…さっすが都、誰かは知らないけど、しでかすことも派手なのねー」
前半は普通に、後半は小声で呟いてから老人に礼を言って、兄の所へと戻る。
ほい、と渡された紙袋を受け取って、聞いたことを伝えた。
「何か爆発したらしいよ?」
「へー、爆発ねぇ…都はホント、派手好きが多いよな」
「だよねー。誰かを殺したいなら後ろからグサってしちゃえば楽なのに」
「それが一番楽だし手っ取り早ぇしな。ま、派手が好きってのは良く分かるけどよ」
「ミハ兄の力って地味だしねー」
髪の小さな袋を抱きしめて歩き出すと、後ろからたくさんの荷物を持ったミハエルがついてくる。……あの荷物はほとんどがネーナの物で…というか、ミハエルが買った物は一つも無かったりする。
そこはいつも通りなので何も感じずに、だけれどこの袋の中の小物だけは大切だから、これだけはしっかりと自分で持っているのだった。
中身は可愛らしいアクセサリー。偶然入った店で見つけた物で、宿に帰って刹那が戻ってきたら付けて見せてみようと思っていた。似合わないことはまず無いだろうし、一瞥だけだったとしても気を引けたという事なので良しとする。
とにかく、ネーナは刹那に構って欲しかった。
「ていうかさ、刹那も私たちと一緒に来たら良かったのに」
「…ネーナ、お前あんなガキのどこが良いんだ?俺にはさっぱり分かんねぇんだけど」
「えーっと…どこが良いかはさておいて……見た瞬間にビビッとって感じ?」
「一目惚れってやつか?…だとしても、俺は絶対に認めねぇ」
「ミハ兄シスコンーっ」
からかうように笑って通りの真ん中でクルリと回って見せ…
ドン、と誰かとぶつかった。
少しバランスを崩したが何でもないように立ったままのネーナと違い、運動神経の差だろうか……相手の男はしりもちをついてしまっていた。
今回は確実に自分の方が悪いだろうと、袋を小脇に支えて手を差し伸べる。
「ごめん……大丈夫!?」
「前見て歩けってんだよ……ん?」
顔を上げた男と視線がかち合う。
数秒後、絶叫が響いた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!お前、トリニティの末っ子!げ、次男までいやがる!?」
「……誰?」
明らかに自分たちを知っている様子の彼の態度が不思議で、ネーナは男を指さしながらミハエルの方を向いた。が、残念ながら兄の方も分からないらしく、さぁ、と肩をすくめていた。
仕方がないので向き直って尋ねる。
「誰?」
「この俺を覚えてないだと!?コーラサワーだ!パトリック・コーラサワーだッ!」
「コーラ……あ!ちょくちょく俺らの前に現れては、あっと言う間に潰されて消えていくあの炭酸野郎か!」
「炭酸言うなっ!」
若干涙目になっているこの相手、実は結構な経験を積んでいるらしい狩人である。
こんなのでよくもまぁ、今の今まで生きて来れたと思うが……何でかは知らないが、コイツは恐ろしいほどに運が良いのだった。
煩いなぁと思い、黙らせようと炎を出そうと思って気付く。
そういえば、都の中では力を使ったら大変なことになるのだ。
では目の前の相手はどうしたら良いんだろうと、ネーナは悩み始める。
……考えるまでもなく、相手をボコボコにすることに決まっているが。