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今回は綺麗に、ガンダムの中ではアリオスしか出てきません。
そして付け加えると、アリオスは四年間ずっとアレルヤの傍にいました。
…良い子なんです。
アリオスには『マリー』という存在が、自分のパイロットにとってどの様な物なのかは分からなかった。けれど彼にとって、それはまるで呪文のように、とてもとても強い何かを宿しているのだと、それだけは漠然と理解できた。
だから、とても悲しい。
折角……折角、触れ合えるかも知れなかったときに、相手はアレルヤのことを忘れていた事が。駆け寄ろうとしたアレルヤを、止める者がいた事が。
何で世界はままならないのだろう。
人一人の願いすら叶わない世界。
歪もうと歪むまいと、きっとこれは変わらない。願いを叶えることが出来る人と、出来ない人がいるのは至極当たり前の事。アレルヤの願いが叶わないと、今はまだ断言できないのが救いだけれど……それでも、今、この瞬間に叶わなかったことは事実なのだ。
もっと幸せになってくれたらいいのにと、起動する身を思いながら、考える。
自分はMSで、機動兵器で、ガンダムだ。世界の歪みを正すという大義名分があったとしても、アリオス自身が兵器であり人間を殺す存在であることは、悲しいかな、変わることは無い。存在理由が変わることなど、到底有り得ない。
アレルヤは違う。たとえ戦うために造り替えられたとしても、彼にはいくつもの道を選ぶ権利がある。それは彼が『人間』であるからこその、絶対の権利だ。
だから、こんな道を選ばないでくれたって、構わないのに。
再び共に空を駆けることが出来るのは嬉しいけれど、真っ先に思うのはそれ。
けれど、彼にだって『戦う理由』があるから、だからアリオスは止めようとは思わない。だからこそ、こうやって彼と共に戦う。
四年のブランクを感じさえないその操縦を心強く感じ、いきなりこんな事をさせて大丈夫なんだろうかと不安に思っていると、いつの間にか敵はいなくなっていた。
あっと言う間。収容所から、アリオスたちは離れていった。
四年ぶりに戻ったプトレマイオスⅡは、変わっているようで変わっていなかった。
「あ、けど、コンテナが無くなったな……」
以前は外側をクルクルと回っていた四つのコンテナ。そこに収容されることなく、ガンダムが並んでいるというのは……どこか不思議に思える。
不思議と言えば、この輸送艦。もう輸送艦でなく戦艦で良いかもしれないが。
何と、大気圏を突入してきたらしい。
初めて聞いたときには驚いた物だが、GN粒子があったら確かに出来なくはない……かもしれない。断定なんて、詳しく分からなくて出来ないけど。
キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていると、一つ、懐かしくも苦笑しか浮かばない部屋を発見した。
独房、である。
アレルヤが命令違反で入ることになってしまったそこ。こんな場所まで再現してくれなんて、製造者はどこまで頑張ってくれたんだろう。
中には誰かいるのだろうか。それとも何かか、あるいは何もないのか。少なからず縁のある場所なだけあって、ちょっとだけ気になった。
考えた末、入ってみることにした。現在のアリオスは精神体なので、非常に楽なことに、ドアは開けることなく通り抜けることが出来る。
「えっと…お邪魔…します…」
聞こえるわけでもないのに一言断って、中に入る。
そこには何もないわけではなかった。赤いハロと、一人の知らない人間がいた。
人間の方は…制服を着ていないし、自分が見たこともないからおそらくは一般人。そういえばダブルオーが、刹那が今日よりも前に誰かを連れてきたのだと、そう言っていた。ということは、彼がその誰かなのだろうか。
と、ここで、赤ハロがアリオスに気付いたらしい。耳をパタパタと開閉して、目をチカチカと点滅させた。言葉を話さないのは、この場にいる人間…彼には実体化していないアリオスの姿が見えないから。怖がらせたり驚かせないための配慮である。突然に動き出した所だけ見たら、配慮するまでもなく怖い思いをしているかも知れないけども。
「お仕事、お疲れ様」
彼には聞こえない声で、赤ハロには聞こえる声で呟いて、アリオスは赤色の球体を軽く撫でた。きっと、赤ハロは彼の傍にいるのが仕事。ということは、ずっと傍にいるということで、それでは機械であろうと疲れるというものだ。ずっと、というのは大変だから。
気持ちよさげに耳を動かす赤ハロを見て微笑み、呼ばれたような気がしてアリオスは顔を上げた。この声は、ケルディムだろうか。
「じゃあ、僕はいくね?」
赤ハロに声を掛けて、アリオスは独房から出た。
この後、アリオスはケルディムに泣き付かれて、一緒にダブルオーに改名の説得をします。
…いやだって、「エクシア」の方が格好いい気が…。