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「……まさかとは思いますが、これに僕も出席しろと、つまりはそう言いたいのですか?」
「君は私のボディーガードも兼ねているのだから、それは当然という物だろう」
「……………この泥が」
「…?リボンズ、何か言ったか?」
「いいえ、何でもありません」
ニコリと微笑むリボンズに騙されそうになるが……生憎、自分は彼からとても近い位置にいたために呟きが耳に届いている。……したがって、騙されることはない。代わりに覚えるのは驚嘆の意だ。何についてかと言えば、それは彼の従者の言う言葉ではないセリフの数々へではなく、その切り替えの速さについて。
そして何の話をしているかというと、それは近々行われるというパーティの話だった。
何でも招待状が届いたとかで、しかも誰か恋人を見繕って行かなければならにと言う、実に不思議なパーティである。そんなのに行くヤツもヤツだが、それを開催する相手も相手である。
まぁ、見ている側は面白いだろう。
そう思いながら部屋を出て行く(適当な女性でも探してくるのだろう、多分)この家の持ち主であり一応は雇い主かもしれない男を見送る。
バタン、とドアが閉まったところで、微動だにしなかった頭がギ、ギ、ギと動いた。
「アリー・アル・サーシェス、貴方も来てもらいますよ…?」
「……は?」
突然すぎる言葉に目を白黒させていると、リボンズは疲れたように向かいのソファーに崩れ落ちた。手は額に当てられており、ぐったりと全体重をソファーに預けているその姿は……間違いなく疲れている。
「僕だけに、あのパーティの騒々しさが襲いかかるのは正直、耐えられません。そういうわけですから道連れに」
「んなこと言われて行くって物好きって、居んのか…?」
「ですから、その第一号に貴方がなってくれればいいんです。先に言った通り、僕はあの騒々しさの中にいるという苦痛を、一人で味わう気はありません」
……どうやらこのパーティは最初ではないらしい。少なくとも前回という物があり、それにリボンズは出席していたようだ。結果はあまり芳しくなかったらしい……肌に合わなかったのだろう、多分。
にしても…彼にここまで言わせるそのパーティというのは…?
「前のはどんなんだったんだ?」
「僕は最初の数時間しか居なかったので詳しくは知りませんが……金髪で迷言が溢れんばかりに出てくる狩人ですとか、ドーナッツを集中的に狙っているポニテですとか…色々といました。僕の退席の後、他にも数人来たらしいですけど、残念ながら会っていません」
「迷言ばかりの狩人に、ドーナッツ好きのポニテ、ねぇ…」
瞬時に浮かんできた二つの顔に、アリーは渋い表情を作った。
おそらくあの二人だろうが……あの二人は狩人でも特殊な存在で、『異端』をではなく『悪』を叩く。人間だろうと異端だろうと、どんなものであれ関係はない。
そして、そんな二人だからこそ、アリーとも衝突がある。
狩人なら狩人らしく、大人しく異端だけ狩っておけばいいものを……。
突っかかってくる以上は抵抗する必要があり、その機に乗じて戦えるのは嬉しいが…目立つのはいただけない。自分のやっている事は良い物ばかりではなく、捕まってしまってもあまり文句は言えない立場である。それは、面倒だった。
「ついてくだけで良いんだな?」
「えぇ。ついでにボディガードもお願いします。契約は切れていないのですし、金を払う対象がいなくなると、貴方も困るでしょう?」
「それほど困りゃしねぇけどな」
けれどまぁ、戦うためには生きている必要があり。
生きるためには金がいるのだから、それを稼ぐことはしておくべきだろう。