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正直、本編沿いで01から順にって…割と無茶だと思った今回。
車なんて出て来てないよ!
…ということで、シーリンさんが移動するときの手段に車があったんだよ、と勝手に決めつけました。
今回はシーリンさんの一人語り。
04.車の中で (第四話:戦う理由 シーリン)
マリナが収容所に入れられていた。
その事実がシーリンを、どれほどまでに動揺させたか……分かる者はいるのだろうか?
かの皇女は長らく付き合ってきた親しい友人。そして、自分と同じように祖国のために奔走する、離れているけれども同じ志を持つ者。
そんな彼女が捕まった。
……幸いなのかは分からないけれど、マリナはCBの一人に連れ出されたようで……五年前に関わりがあるのを視認しているから、酷い目にあっていないだろうと予測は出来る。
が、やはり不安は募る。CBの誰かと知り合いであるのはマリナだけであって、決してシーリンが知り合いであるわけではない。だから大丈夫だと言い聞かせるだけの要素が、自分には『マリナをあの場から連れ出した』というただ、その一点しかないのだ。
だから目的地へ向かう際に車に揺られている間も、考えるのはそればかりだった。
助手席から車外を見てみても、思うのはそれだけ。それ以外には何も思えない。
これほどまでに、彼女というのは自分の中で大きく位置を占めていたのかと、こtっそりとシーリンは溜息を吐いた。この心配は……もう、クセの域に達しているかも知れない。しばらく離れていてもどうしても…侍女だった時の考え方が離れない。今はアザディスタン第一皇女、マリナ・イスマイールの侍女ではなく……カタロンの構成員の一人であるというのに、だ。
いや……あるいは、まだ自分は彼女の侍女であるのかもしれない。
ずっと、ずっと、シーリンはマリナの侍女であるのかもしれない。
それでも構わないか、と普段からは考え難いほどにすんなりと、その考えはシーリンの中に収まった。
別に、構成員をするから侍女を止める、なんて事はしなくていいのだ。行動の制限という点から見れば、そうすることが好ましくもあるけれど……そして実際、今の自分はそのようなものだけど、だからといって侍女としての思いを無くしたわけではないのだし。
平和になったら、目的を達せられたら……また、彼女の傍に控えることになるのかもしれない。そして、その時の自分を想像してみると……実にしっくりとくる。
「侍女が反乱分子…テロリスト、ねぇ…」
車内にいる誰にも聞こえない声で、小さく呟いた。
反乱。今ある何かに反抗の意を示す事。
それが国に対してならまだ可愛い方なのだろうが、生憎とそうではない。というか…あの治安状況のアザディスタンにトドメを刺す気はないし、むしろその国を救いたいのだし、この可能性はどこにもない。
自分が反抗しようとしているのは連邦……今の『世界』である。
何とスケールの大きいことかと自分でも呆れて笑いそうになるが、その呆れる行動を行おうとしている自分や、大多数の人間がいることも事実。正直……笑えない話なのだろう。
けれど、これもその内、笑い話になるのだろう。
カタロンの殲滅という形で。
連邦は強い。世界そのものと言って過言でないほどの大きさを持つ、この世を二分化してしまったカーテン。現状の真実を知らない者と、知っている者とに分けてしまった薄く感情で、不透明な布。
そんな物に小さな反乱分子が勝てるなんて、到底思えない。
だが、それでも自分たちは反抗を続ける。
隠された現実を知っているから。
やらなければならない事だから。
そうするだけの理由があるから。
やるだけの価値が存在するから。
だから、反乱を続ける。
……もしかしたら、こんな自分がマリナの侍女だと、未だに思っているのは馬鹿なことなのかも知れない。負ける気はないが、へたをすれば主君たる皇女を自分が巻き込む、そんな可能性すら秘めているこの行動なのだから。
それでも、思わせていて欲しいと思う。
少しの間だったけれど、離れてみて分かったことがあるから。
彼女の隣というのは、実に居心地がいいのだと。
ガタガタと揺れるこの車の座り心地の悪さと、隣の運転席に座っている彼女ではない別の人間の存在が、その考えを一層に強めている気がした。
それから…彼女の名を聞いたときの懐かしさ、も。
シーリンさんは、本当に祖国とマリナ様とが大好きなんだなぁとか思いつつ。