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ロクアレーっ!
お兄ちゃん、あとちょっとだったのに……っていうお話。
02.うたた寝
何の気無しに向かった休憩室。誰もいないと思っていたのだけれど。
「……あ」
一人だけ、いた。
机に俯せになって、眠っている人物。
ロックオン・ストラトス。
起こさないように恐る恐る近づいてみると、彼の頭が乗せられている腕、その先に本が開いたまま持たれているのが分かった。
本を読んでいて、眠くなってそのまま眠ってしまったのだろう。
珍しい、と思う。彼は読書を始めると集中しきってしまって、途中で眠るとことはおろか、雑音や近づく気配にさえ反応しなくなる。
よっぽど疲れていたのだろうか。
「最近はミッション続きだったからね……ハレルヤ?」
半身に話しかけたのだが、返答はない。どうやら彼も眠ってしまっているらしい。
机の上に置いてあったしおりを取り、開かれっぱなしの本を取る。
開いていたページにしおりを挟み、閉じると本の題名が見えた。
「これ……」
アレルヤには、その題名に見覚えがあった。
たしか、これは以前彼がロックオンに『おもしろい』と紹介したものだ。
……読んでくれてたんだ。
それのことが何だか、アレルヤを嬉しい気持ちにさせる。
本を彼の傍らに置いて、何の気無しに寝顔をのぞき込んだ。
同姓のアレルヤから見ても、ロックオンの容姿は整っていると思う。それは刹那やティエリアも同じだけれど。
それにしても……眠っていると、起きているときとはすごく印象が違う。どこがどうなのかって訊かれても、答えることはできないけれど……とにかく、何かが違う。
何が違うんだろう……?
考えてもアレルヤには答えを出せなかったし、別に出す必要も無いと思う。無理をしてまで出すものではないだろうから。
「……そういえば」
あの本。あれは実は短編集で、様々な話が入っている。
その話の中に、ちょうど今の状況みたいなものがあったのだった。
たしか……悪い魔法にかかって眠っているお姫様に、やってきた王子様がキスをしたら悪い魔法が解けて、お姫様の目が覚めるという……そういう、ありきたりだけどおもしろい話。
この状況だとロックオンがお姫様で、アレルヤが王子様の役になるのが順当だろうが。
…ロックオンがお姫様って言うのは、会わない気がするな……。
彼は、どちらかというと王子様の方だと思う。
でも……と、アレルヤはいたずら心を起こした。
…ちょっとだけ、ためしてみようか?
さすがに唇というのはまずいだろうけど……頬になら。そのくらいなら挨拶でやっている国もあるというし、問題は無い……と思う。
それにロックオンは冗談が通じる人だ。笑って済ましてくれるだろう。
ゆっくり、顔を彼の頬の方へ。
もうちょっと。
あと少しで……
「何をしている、アレルヤ・ハプティズム?」
「うわぁっ!?」
後ろからの突然の声に、驚いて飛び上がる。
それから、恐る恐る振り向くとそこには。
「……ティエリア」
「どうして君がここにいるんだ?」
「えっと……部屋にいても暇だったから…」
「で、何をしようとしていた?」
「う……」
言えない。
言えるわけがない。
「どうした?言えないようなことでもしていたのか?」
「……ティエリア、ごめんっ!」
アレルヤは叫び、彼の横を通って休憩室から駆け出て行った。
「……狸寝入り、というのはどうかと思うんですが」
アレルヤが立ち去りいなくなった部屋で、ティエリアは眠っているはずのロックオンに声をかけた。
返事はないが気になった様子もなく、ティエリアは続ける。
「ロックオン・ストラトス、アレルヤが何をしようとしていたか気づいてたでしょう」
「……そこまで分かってたのか?」
「一部始終、見ていましたから」
眠っていたはずのロックオンは起き上がり、苦笑を浮かべてティエリアを見た。
一部始終見ていて、あそこで入ってくるとは……さすがはティエリアというか。情けも容赦もないというか……夢を見させてくれても、結局はそれを打ち壊すところが彼らしい。
それにしても、である。
何であんなにも、アレルヤの行動は分かりやすいのだろう?彼が何をしようとしているのか、目を閉じていても気配や言動で簡単に予測ができる。
「このくらいいいだろ?ミッション続きで疲れてんだから」
「それを言うなら俺も疲れていますが」
ティエリアはくるりと体の向きを変えた。
「いいですか、ロックオン。頬だろうが、アレルヤのキスを受けることは俺が許しません」
最後にこう言い捨てて、彼は部屋から去っていった。
残ったロックオンは、苦笑を浮かべたまま呟いた。
「……こりゃ、前途多難だよなぁ……」
なんせ、敵はあのティエリア以外にも何人かいるのだから。
ロク兄にいい思いさせてあげたいという願望から……。
結局、邪魔されてるけど…。