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紫のお題も久しいような気が。お題って何種類もあるから、よけいにそう思えるのかも。
色お題なので一期です。ティエアレですよ。
09.暗がり
……確かに、こう仕向けたのは自分だ。
だが……
「想像以上の反応だな…」
「なっ……何が…?」
必要以上にビクついているアレルヤの両腕は、今、ティエリアの左腕にしっかりと絡まっている。つまり、しがみつかれているわけだが。
事の始まりは…そう、とあるDVDを手に入れた事だ。
なかなかの出来のDVD。リアリティもあったし、迫力も充分。何よりシナリオも良くできていた代物だった。
では、そのDVDは何の映像が入っていたかというと。
「っ……」
「…アレルヤ・ハプティズム、あまり腕に力を込めるな。いい加減痛くなってきたぞ?」
「でっ…でもでもでもっ…」
スピーカーから響いてきた絶叫のせいで、だろう。さらに力強くしがみつかれた腕は、何だかそのうちギシギシといいだしそうな程。いや、さすがにそれは無いだろうが。
まぁ、無理もないとは思う。
何故なら……今見ているのはホラー映画なのだから。
「苦手だろうとは思っていたが、まさかこれほどとは予想できなかった」
「え……もしかして、確信犯……?」
「当然だろう。俺が何の考えも無しにこのようなことをするとでも?」
「……酷いよ」
咎めるような視線を向けられるが、そんなものが気になるティエリアではない。
というか、この状況に持ってきた時点で自分の勝利だ。話は既に終盤。今抜けるのも手かも知れないが、それが今の彼に出来るかというと……絶対に無理だ。
そんな馬鹿な……と思う人に聞こう。
深夜を回っている今この時刻、明かりの一つも点いていない廊下に、果たして彼は一人で出て行くことが出来るだろうか?あと付け加えると、どうやら彼の半身は熟睡状態らしいので、本当に彼は『一人』になってしまうのだ。
今の彼に、暗い場所はNG。
つまりはそういうこと。そういう時間を狙って行動を起こしたティエリアだから、むしろそうでなければ変なわけだが。
「ほら、アレルヤ。次の犠牲者が出たぞ?」
「ティエリア、もう切ろうよぉ……」
「何を言っている。あと少しで終わりだというのに?」
半分泣きそうなアレルヤだが、その表情のせいで『さらに虐めたい』とかいう考えがムクムクと鎌首をもたげているのを理解しているのだろうか?……理解できたとして、それは多分ハレルヤに教えてもらってだろう。
だが、肝心のハレルヤは眠っている。
「うぅぅぅぅ……本当に酷いよティエリア…」
「今回の話のテーマは『S』らしいからな」
「…『S』って?」
「君は知らなくていい」
あともう一つテーマがあるらしいが、それはティエリアの知るところではないし、どうせそのうち分かるだろう。
とまぁ、そういうことはさておいて。
よくやくスタッフロールが流れ始めた画面を見て、アレルヤが安堵の息を吐いた。
「終わった……」
「あぁ。で、一つ訊くが」
「何?」
「部屋まで戻れるか?」
一瞬の間の後、怖ず怖ずと、アレルヤはこちらを上目遣いで見ながら口を開いた。
「えっと……もし良かったら、一緒に眠ってくれないかな…」
…というわけで、ティエリアとアレルヤは同じベッドの中にいるわけだが。
「……生殺しだな…」
横になるやいなや直ぐに眠ってしまったアレルヤの髪を梳きながら、ハァと溜息を吐く。
よっぽど怖かったのだろう。眠っていてもこちらに抱きついてくる彼は、時折うなされたりもするのだが、そういう時は軽く背中をさすってやるだけで穏やかな寝顔に戻る。単純だと呆れもするが、それどころではなかった。
同じベッドに二人で、というのだけでもわりと危なかったというのに……これでは本当に何というか……こんな時は彼の無防備さが恨めしい。
まさか寝ている相手に手を出すわけにもいくまいし、了承だって取ってないし…というか了承はハレルヤが居る限り取れないし、あとあの天然っぷりをどうにか直さないと自分の気持ちとか考えとか諸々の事に気づいてさえもらえないし。
前途多難だな……と思いながら、どうか朝まで理性が持ちますように、と呟いた。
~翌日~
「ん……おはよう、ティエリ……ア?どうしたの?目の下に凄いクマができてる…」
「誰のせいだ誰の…」
「……?」
「……分かってないな」
「え…僕?寝てる間に何かしちゃった…?」
「いや…自覚がないなら別にいい」
テーマは『S』と『生殺し』です。生殺しだな…って言わせたかった。
アレルヤはホラーはダメだと思います。
そしてティエリア、お疲れ。