[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
197
どうして、その名前を。
アレルヤは混乱していた。
変だ。自分はその名前を『知らない』ハズなのに。
どうして、自分はその名前を『知っていた』のだろうか?
どうして、どうしてここまで心がかき乱されるのだろうか?
忘れただけで会ったことがあるのだろうか?
分かってはいけない
解ってはいけない
判ってはいけない
その名前が何なのか、誰を指すのか思い出してはいけない
その記憶は深く、深く沈めた記憶なのだから
だから……
ギィ
「……!」
「アレルヤ、大丈夫なの!?アレルヤ!」
自分の中、その奥の方から木製のドアが軋む音が聞こえる
ダメだダメだダメだダメだダメだ
そのドアは、開いてはいけないのに!
折角押し込めていたのに
思い出してはいけないのに
お願いだから
お願いだから、その『一番目の罪』の記憶だけは……
『思い出したくないのかい?』
クスリ、という笑い声が頭の中に響く。
ボンヤリと、アレルヤはそちらに意識を向けた。
そこには……自分の頭の中なのに、自分ではない誰か、別の誰かが一人だけ、立っていた。顔は、影になっていて見えない。
(…誰)
『誰か?失礼だな…君は知っているはずだよ?だって、僕と君は初対面じゃないからね』
(会ったことが……ある?)
『そう。僕らの出会いは君が閉じこめた記憶の中に』
その言葉に、浮かんでくるのは一つの情景
赤い赤い風景の中、紅の手のひらを見つめて嗤っているのは………誰?
「っ…嫌だ嫌だ嫌だッ…」
「アレルヤ!?」
『ふぅ…イジメ過ぎたのかな?じゃあ、今日はこのくらいにしとくよ。またね』
頭を抱える自分に、横に座る誰かが触れる。
そんなことが気にならないほどに…記憶の中の赤と紅に、思考が塗り潰されていた。