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「弟?」
「そ、弟。都に住んでるはずだから、もしかしたら会えるかもな」
「君にも兄弟がいたのか…初耳だ」
ヨハンがしみじみと言うが、それが普通なのだとロックオンは苦笑した。自分たち両方を知っている者ならば関連性を見つけ出すのは簡単だろうが、そういう相手がそもそも少ない。よって、この事実を知る存在は圧倒的少数だと断定できる。
両方を知る者が少ない理由は酷く簡単。
就いている職業が、全く逆方向なのだ。
だから、共通の知り合いと言えば、せいぜい、情報屋や自分たち二人の行きつけの店の住人ぐらいのもの。他にも何人かいるかも知れないが。例を挙げるならば昔からの知人……といってもまぁ、もう殆ど生きてはいないだろうが。
両親と妹がいなくなったあの日。
住んでいた場所は……
と、思考が暗い方向へと向かうのを、頭を振って止める。
現在の自分を形成している思い出に浸るのは後でも良い。けれど、今は止めておくべきだ。復讐心に歯止めを掛けておかなければ、目の前にいる三人の異端へと銃口を向けてしまいかねない。
……にしても。
「俺、よくもまぁ異端と仲良くなれたな……自分で自分が信じられないぜ」
「突然何だ?……と言いたいが、それは私も同意だな。君とは何度も衝突したから」
「それはお前らが悪事ばかり働いてたからだろうが……」
「正確に言うと私ではなく、ネーナとミハエルだがな」
そう言ってヨハンは額に手を当て、小さく嘆息した。
そして、次に彼の口から出た言葉は……意外と衝撃的だった。
「街が無くなれば補給が出来なくなるし、何より簡単に人を殺すのはどうかとも思うからな……たまには注意をしているのだが」
「……え?」
これこそ初耳だった。
思わずヨハンを凝視しながら、呆然と呟く。
「お前にも……人間の命は大切にって心があったんだな…」
「……確かに、殺すことに躊躇いは覚えない。知らない誰かが死んでいても、あるいは自分がそれを殺しても何も思わない。人間だけでなく異端もだ。が……一般状況で殺しが認められるなど…そこまで常識を捨てたつもりはないぞ、ロックオン」
殺しても死んでいても気にしない……というのは彼は異端の中での『悪魔』という種族なので、気にしないことにする。彼らはそういう種族であり、それの考え覆すことはほぼ不可能と言って過言ではない。そして、そういう考えがあるからこそ、二人の弟妹を事前に止めるようとはしなかったのだろうし。
というか……自分から見ると狩る対象である彼に、こんな事を言われてしまうとは。
唸りながら頭をガシガシと掻いていると、カタギリが笑みを浮かべて、そういえば、と口を開いた。
「君の弟さん、どんな職業についているんだい?やっぱり狩人かな?」
「あー、いや、アイツ、それとは逆方向の職に就いてるから」
「逆?」
狩人は異端を狩る。
ならば逆は?
「そ。アイツは人間を殺す」
それは、人間を狩る事。