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「ライルー、どこ行くんだー?」
「だから仕事。とっとと済ませて明日は空けてやる」
「そうなのか?ありがとな。…で、マリアだっけ何だっけ…」
「マリナだろ」
「そう!で、そのお嬢さんがどこにいるか分かってんの?」
…分かるわけがない。相手は動くし、さすがにそこまでの情報は望めないというもの。都中にある監視カメラを使えるのなら出来なくは無かろうが、そんなことは並大抵の貴族でも出来ない。可能性があるのは管制室と、本当に偉い一握りの人間と……都の中枢に食い込んでいる月代どもぐらいのものだ。
溜息を吐いて立ち止まり、ライルはくるんと体を百八十度回した。
そして、付いてきたケルディムの姿を見る。
「知らない……というかお前、どうして付いて来るんだ?」
「暇だし、中にいるよりは外にいた方が仲間を見つけるのが楽かなー、と」
「じゃあ勝手に行け。俺は仕事があんだよ」
「つれないな、ライル。少しくらいなら手伝ってやらないことも無いのに」
ま、いいけど、と、彼は今度は後ろではなく隣に点き、歩き出そうとしないライルを不思議そうな視線を向けた。何をやっているんだ、と。
その表情を見て思わず、自分がケルディムを軽くでも蹴ったのは…とりあえず、自分のせいではないだろう。これは絶対に非があるのは向こう側である。
それはともかく…歩くだけは暇なので、彼から少しでも情報を取り出しておく。
「お前の仲間、何人いるんだ?」
「俺を含めて九人。だけどまぁ、一人は別だから実質八人。全員そういう認識だな」
「ふぅん……で、その一人は?」
「俺らのオリジナルってヤツ」
ケルディム曰く、その一人、というのは彼らとは違って元から物体から人型へと移り変わることが出来たのだそうだ。原理はやはり不明だが、それが出来たたった一つの人形であった、と。
「だから、そこから人型タイプのデュナメスたちと、武器タイプの俺たちとって、系列が分かれたわけだな。まぁ、俺たちも理論上は人型になれたそうだけど、力が足りなかった」
「他の武器タイプって、どんな格好なんだ?」
「セラヴィーが杖…てのは前言ったっけ?あとは剣と、人」
「……人?武器じゃねぇだろ、それ?」
それでは人型タイプと被るのではないだろうか。
首を傾げていると、ニッとケルディムが笑った。
「アイツの場合は見た目じゃなくて、心がな、武器なんだよ」
「心?」
「そう。アイツの心は完全に武器…短剣って所か?『人』っていう姿の裏に隠された『武器』っていう心の刃、みたいな感じだな」
「嘘付け」
そんな曖昧な理由で『武器』に部類されたら…たまったものではない。
だからそう言えば、やれやれ、と隣を歩く人形は肩を竦めた。
「からかいがいのないヤツ」
「そりゃ光栄だな。俺はからかうのは好きだが、やられるのはそれほど好きじゃない」
「そーですかっ」
ふて腐れたのか、ふいっと顔を背けたケルディムに呆れつつ、何も言わずに歩いていると、ふいに、ポツンと人形が呟いた。
「心が武器って言うのは……本当だぜ」
「…他諸々は?」
「全部、嘘じゃない。曖昧だろうと、それが正しい」
アイツは一番分かり難いんだと、ケルディムは真剣に言った。
分かり難いからこそ一番安全で、一番危険だと。
「だから、アイツだけは絶対に見つけ出さないといけない。手遅れになる前に」