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あの頃って言うか…現在進行形ですが。
だって四年経っても未だに…ねぇ?
02.あの頃の夢
「ずっと夢見てきたことがある…」
「夢見てきたこと?」
パタン、と本を閉じてティエリアは刹那の方を見た。
彼は唐突に何を言い出すのだろうか。ここは休憩室で、いるのは自分、彼、アレルヤの三人。自分が読書、アレルヤが拘束されていた四年間に起こったことの確認、刹那がぼうっと物思いに耽っている……という、誰もが思い思いのことをしていたその状況で、決して彼の先の一言へ繋がる展開は無かった。
情報端末で記録を閲覧していたアレルヤも一旦画面を切り、刹那の方を見て首を傾げた。
「いきなり、どうかした?」
「ふと思い出した……俺は、アレルヤの背を抜かすのが夢だった」
「え、僕の?」
「あぁ」
刹那はそう、こくりと頷いた。
「だからずっと牛乳を飲み続けてきた」
「結果が現状か……十分じゃないのか?170越えだ、以前の君とは比べようもないほど成長したと、こちらで認めてもいい」
というか、既に認めているが。
どうだ?と視線で問いかけてみれば、しかし彼は首を振った。
「ダメだ」
「えっと……じゃあ、どうだったら良いんだろう?」
「せめて、あと3㎝…」
「3……?」
何でそんなに微妙な数字なのか。
どういうことかと考えること数秒…直ぐに、どういうことかティエリアは気付いた。
一方、アレルヤは分からないらしく、腕を組んで唸っている。まぁ……刹那のデータを見てみて成長を確認……なんて事をする余裕は無かっただろうし、これからもしばらく無いだろうから、ここは分からなくて当然ではある。
くだらない、とティエリアは再び本を開いた。
「そんなにマイスター中で一番背が低いのは嫌か」
「……ずっと小さい小さいと言われてきた俺の気持ち、分かってもらおうとは思わない」
「刹那……大丈夫だよ?今でも充分に大きいよ?」
「アレルヤ……気持ちはありがたいが」
そう言って、刹那は苦笑を浮かべた。
「アンタがそれを言うのはどうかと思う」
「え?……あ!」
最初はどういうことか分からなかったらしいアレルヤも察したらしく、少し顔を赤らめて、申し訳なさそうに刹那を見た。
「…ごめんよ?僕の方が大きいのにね…これじゃ、イヤミになっちゃうよ……」
「気にするな。他意がないのは分かっている」
刹那はそう言って、優しげに笑った。
だが、だからといって気にしないアレルヤではなく、えっと…と呟きながら、何やら考え事を始めた。
「医療技術を応用したら、もしかしたら出来なくもない……かも…」
「いや、そこまでして伸ばす必要は無いんじゃないか?」
「ティエリア……けど、そうでもしないと20を越えた男性が背を伸ばすのは…難しいんじゃないかな……」
「それはそうだろうが…」
一応、20くらいで人の成長は止まると言うし。
けれども、いくら一番背が低いのが嫌だからと言って……そこまでするのはどうだろう、と思うところもある。悪いと言っているのでなく、必要性はあるのか、と。それも……やりたいことに必要性も何も無い、と言われてしまえば終わりなのだが。
「けど、頑張ったら、もしかしたらあと1㎝くらいなら伸びるかもしれないよ!」
「最低でも2㎝は伸びて欲しいところだが……」
「毎日に飲む牛乳の本数を増やしてみる?」
「効果はあるのか?」
「……微妙かなぁ…」
聞こえてくる二人の声をBGMに、ティエリアは読書を再開した。
くだらない、と心中で呟きながら……こういう議論も、たまにはいいのだろうかと微笑みながら。
必要性は感じない議題だが、聞いていて面白い。
この後、アレルヤと刹那の顔が接近しすぎて危険領域に入ったのを見て、刹那の側頭部目がけて手に持っていた本を投げたりしたのは、別の話。
……なんか刹アレっていうよりはマイスター(ライル含まなくてゴメン)って感じです。
けど、ラストは微妙にあってる。ティエアレも入ってるけど。