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「にしても信じ難いな……君があの剣だというのは」
「もう一度」
「いや…変わらなくて良い。無理を言って二回もやってもらったから」
「そう」
呟いて、ダブルオーは座っていた机の上から降りた。
正直……退屈だった。
先ほど手に入れたチラシで、明日に美術館で展覧会があることを知った。そして、そこにセラヴィーが運ばれてくることも、また。
だから第一目標は彼に決定した。他に起きている誰かがいたら、きっとその場で会うことが出来るだろう。何せここまで大々的に知らされているのだから。
いっそ、意図的に情報が流されたのでは…と思うほどに。
ならば何故、という疑問が生じるのだが、そこを知る術はダブルオーにはない。
可能性としては、自分たちの存在を知るモノがあげられるが……そんなものは殆どいない上に、自分ではどうしようもなく調べようがない。人脈なんて、人形…しかも剣であるこの身に期待されても困るというものだ。
クラウスに訊いてみようかとも思ったが、それも出来ないと判断した。彼はあくまでダブルオーという剣を『持っていた』だけであり、決して自分たち人形のことを知っていたわけではない。そもそも、自分が剣ではなく人形として作られた、ということも当然ながら知らなかったわけだし。
だが、一つ…彼に訊いて答えが返ってくる物をに思い至る。
部屋から出ようとしていたダブルオーはくるりと振り返り、窓際に立っていたクラウスの顔をまっすぐに見た。
「クラウス」
「…今度は何だ?」
「展覧会の開催者は」
「展覧会……あぁ、例の杖が出てくるあれか。確か…」
待ってくれ、と言って考え込み始めた彼は数秒後、思い出した、と呟いた。
本当に開催者がいたのかと驚きながらも、ダブルオーは無言で続きを促す。
「一般には知れ渡っていないようだが、確か……イオリア・シュヘンベルグという男だそうだ」
「…え?」
そして彼の口から零れた言葉……名前は、ダブルオーの思考を停止させるのに、十分な威力を持っていた。
「イオ…リア……」
「…?ダブルオー?」
「嘘……だって……だって……」
その人は、死んだのだから。
小刻みに震えながらもそう続けると、彼は困惑したように眉根を寄せた。理解できない、という様に。
「同じ名前であっても別人である可能性だってあるだろう?なのにそんなに動揺して…」
「無い…その名は、彼を知るもの以外に騙れない…」
「何だと?」
「そういう力が籠もっている…」
だから、有り得ないのだ。
あったとしたら…それは……
「有り得ない…彼に会い、今も生存する……なんて」
「何故だ?」
「だってイオリアは……私たちの『父』は…」
何世紀も前に、死んでいるのだから……