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206


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「にしても信じ難いな……君があの剣だというのは」
「もう一度」
「いや…変わらなくて良い。無理を言って二回もやってもらったから」
「そう」

 呟いて、ダブルオーは座っていた机の上から降りた。
 正直……退屈だった。

 先ほど手に入れたチラシで、明日に美術館で展覧会があることを知った。そして、そこにセラヴィーが運ばれてくることも、また。

 だから第一目標は彼に決定した。他に起きている誰かがいたら、きっとその場で会うことが出来るだろう。何せここまで大々的に知らされているのだから。
 いっそ、意図的に情報が流されたのでは…と思うほどに。

 ならば何故、という疑問が生じるのだが、そこを知る術はダブルオーにはない。
 可能性としては、自分たちの存在を知るモノがあげられるが……そんなものは殆どいない上に、自分ではどうしようもなく調べようがない。人脈なんて、人形…しかも剣であるこの身に期待されても困るというものだ。

 クラウスに訊いてみようかとも思ったが、それも出来ないと判断した。彼はあくまでダブルオーという剣を『持っていた』だけであり、決して自分たち人形のことを知っていたわけではない。そもそも、自分が剣ではなく人形として作られた、ということも当然ながら知らなかったわけだし。

 だが、一つ…彼に訊いて答えが返ってくる物をに思い至る。
 部屋から出ようとしていたダブルオーはくるりと振り返り、窓際に立っていたクラウスの顔をまっすぐに見た。

「クラウス」
「…今度は何だ?」
「展覧会の開催者は」
「展覧会……あぁ、例の杖が出てくるあれか。確か…」

 待ってくれ、と言って考え込み始めた彼は数秒後、思い出した、と呟いた。
 本当に開催者がいたのかと驚きながらも、ダブルオーは無言で続きを促す。

「一般には知れ渡っていないようだが、確か……イオリア・シュヘンベルグという男だそうだ」
「…え?」

 そして彼の口から零れた言葉……名前は、ダブルオーの思考を停止させるのに、十分な威力を持っていた。

「イオ…リア……」
「…?ダブルオー?」
「嘘……だって……だって……」

 その人は、死んだのだから。

 小刻みに震えながらもそう続けると、彼は困惑したように眉根を寄せた。理解できない、という様に。

「同じ名前であっても別人である可能性だってあるだろう?なのにそんなに動揺して…」
「無い…その名は、彼を知るもの以外に騙れない…」
「何だと?」
「そういう力が籠もっている…」

 だから、有り得ないのだ。
 あったとしたら…それは……

「有り得ない…彼に会い、今も生存する……なんて」
「何故だ?」
「だってイオリアは……私たちの『父』は…」



 何世紀も前に、死んでいるのだから……

 

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