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207


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「やぁ、リボンズ。久しいね」
「久しいって……昨日も会ったばかりだと思うけど?」
「そうだっけ?長く生きてると、時間の流れがよく分からなくって」
「長く?僕と同程度しか生きてない君が?」
「比喩だよ、比喩。少なくとも猫よりは長く生きてる」

 くすりと笑って窓から部屋に入ってくるリジェネに呆れの溜息を吐いて、リボンズは手近にあった椅子を押し出した。

「立ち話でもなんだし、座りなよ」
「リボンズは優しいね。どこかの誰かとは大違いだ」
「それって誰…と訊いても無駄だろうね」

 彼は謎の多い友人だから……いや、友人という、その表現は生ぬる過ぎるかもしれない。同じ目的を持った同胞というところが正しいし、あるいは同じ種族と言うこともまた、正しいかも知れない。
 そう、彼は月代だった。

 リボンズよりも前に月代として目覚めたらしい彼には、色々と世話になった。力の使い方、自分たちという存在、世界の有り様……どれも、月代の『奪い取る力』さえあれば直ぐにでも分かることだったが、力を使いこなせなかった当時の自分では、それを知るのも無理な相談だったわけである。

 そして、彼が自分と知り合いであることは……秘密だ。
 理由は簡単で、彼が隠れているから。

「で……あの街はどうだった?」
「どうもこうも…ハズレだったよ」
「ふぅん…どうしてそう分かるのさ?」
「あの街で『魔王は存在しない』と明言する人がいたからね」

 それが嘘と言ってしまえばそれで終わりだが、見たところ彼に嘘を吐いている様子はなかった。けども……いつもならば、それでも疑っただろうが。
 それをしなかったのは、きっと彼がリジェネにそっくりだったから、警戒心が薄れて。

「…まぁ、嘘ではないだろうと、ね」
「嘘じゃない…ね。確かにそうだ。けど…本当でもないと、僕は思うけど」
「本当でもない?」

 それはどういうことかと、あの街に目標がいる、と情報を与えてきた彼を見る。
 椅子に座っていたリジェネは、ふふんと笑った。

「魔王というのはね、今のこの世界には存在しないのさ。というのも…二つに分かれているからなんだよ。分かるかい?完全なる魔王はいないけど、そうでない魔王の『なり損ない』ならいるんだよ?」
「それは…」
「残念だったね。彼を問い詰めれば分かったかも知れないのに」

 あまり残念そうではなく言って、リジェネは席から立った。
 それから窓の桟に足をかけ、自分を振り返って一言残し、去った。
 残されたリボンズは……一人、嗤う。

「僕を欺いた……いや、僕が勝手に自己解決した、のか…まぁいいさ。次は絶対に目標を殺してやらないとね。僕らの目的のために」

 けれど、それも忌まわしいパーティが終わってから。
 何て不条理な世界だろうと溜息を吐きつつ、リボンズはベッドに腰かけて瞳を閉じた。
 そして浮かべるのはリジェネの言葉。
 途方もない夢で、しかし自分たちの力があれば実現も可能な、夢。



「『世界を僕らの手にするために頑張ろう』…か」

 

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