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薔薇と言えばあのヒトでしょう。
…いや、劇中じゃ薔薇なんて持ってなかったけど。持ってきたのは手袋だったけど。
けどなんか、似合いそうだ。
18:薔薇
呼び鈴に呼ばれて玄関を開き、見えた顔が顔というのは現状では言えないものの気配が確実にとある知り合いの物だったので思わず右ストレートを繰り出した行為に関しては、決して自分に非があるわけではないと思う。
その右ストレートは綺麗に相手の顔面に入り、くらった相手はそのまま後ろに倒れ……ずに持ちこたえ、即座に体勢を立て直した。
「いきなり何をするんだっ!?…はっ、まさか、ようやく私の決闘の申し込みを……!」
また変なことを言い出す相手に次は蹴りを見舞って、体勢が崩れたところで素速くしゃがんで足払いを掛けた。そして、完全に倒れたところでげし、と顔面を踏みつけてやる。その際に彼が持っていた物はしっかりと確保しておいた。多分、土産か何かだろうから頂戴しておいてやろうと考えたのだった。
土産らしい物を視界から外して、ウイングは踏みつけられている彼と共にやってきた長身の男性に問いたげな視線を送る。
送られた相手は頭痛がするらしく、眉間を揉みほぐしていた。
「そういう事をするのは一人しか心当たりがないぞ……お前はウイングで決定だな」
「トールギスⅢか」
「あぁ。それからそっちの、お前に踏みつけられているのはエピオンだ」
「…やはりな」
ならば、容赦は必要ない。存分にボコボコにしてやろう。
……いや、さっきの邂逅から今まの間でも、容赦というものは微塵も無かったのだが。
さて、次はどのような目に遭わせてやろうかと考えているうちに、奥からパタパタと走ってくる足音が聞こえてきた。
「おーい、ウイング、お客さん誰だー?」
「トールギスⅢと、いつもの迷惑野郎」
「いい加減エピオンって呼んでやれよ……って何踏みつけてんのお前!?」
靴の下にある者に気付いたらしく、慌てて駆け寄ってくるデスサイズを見て、ウイングは足をエピオンから離した。いい加減に懲りてもらわなければ困るので、思い知らせるという意図も込めて、これ以上の事をする気ではあったが……だからといって彼の前でやるのもどうかと思うわけだ。
さすがに直ぐには復活しない彼の代わりに、彼が持っていた土産品を駆け寄ってきた仲間へと渡す。
「これ」
「ん?」
「どうやら土産のようだから、もらっておくといい」
「ようだ、って……確認取れよ、お前。トールギスⅢは無事なんだし」
真っ赤な薔薇の花束を受け取って、デスサイズはトールギスⅢの方を向いた。
「これ、もらっちゃって良い?」
「構わんと思うが……そこで寝ている当人に聞かなければ分からんな」
「だよなぁ…でも、しばらく起きそうにないよな?」
「一番最初に右ストレートをまともにくらい、次に蹴りが入って足払いを掛けられ、後頭部から頭を地面に打ち付けた上に、挙げ句の果てには顔面を目一杯の力で踏みつけられたからな。気絶しても当然だろう」
「お前ホントに何やって!?」
慌ててエピオンを起こそうとする黒い死神を制して、ウイングはトールギスⅢの方を見た。何も、こんなことをデスサイズにやらせる必要はない。
そんなウイングの思考が分かったのだろう、視線を受けたトールギスⅢは溜息を吐きながらも苦笑を浮かべ、倒れたままのエピオンを担ぎ上げた。
「とりあえず中に入れて、ソファーかなんかに寝かせればいいか」
「いや……床で充分だろう」
「ウイング…そーいうこと言ったら、ダメ、なんだけど?」
言いながら、不機嫌そうに見上げてくる彼の頭に手を乗せて、くしゃりと撫でる。
「気にするな。この程度でへこたれてくれる相手じゃないからな…もっと徹底的にやらないといけない。なのに今から気にしていると、後々が大変だぞ?」
「まだやる気!?」
「当然だ。いい加減にストーカーを止めてもらいたい」
「…いや、ストーカーとは違くね…?むしろお前が相手をしないのが悪いんじゃね…?」
そこのところは?と問いかけてくる目から視線を背け、ウイングはそのまま奥へと向かうトールギスⅢの後を追う。
それに慌てて付いてきたデスサイズは、薔薇をしげしげと眺めながら首を傾げていた。
「これ……どこに飾ればいいんだろーな?ありすぎて余るよーな気がするんだよねぇ…」
「……押し花にでもしてみればどうだ?」
「あ、それナイスアイディア!…んじゃ、落ち着いたらやってみる。しおり作ってみよ、しおり」
上手に出来たらお前にやるよ、と笑うデスサイズに微笑み返して、ウイングは言った。
「…楽しみにしている」
憐れエピオンさん。本編中じゃ色々と可哀想だけど、ここでも少し可哀想。
でも、格好いいエピオンさんを書けるように頑張り…たいな。
だって、基本的には格好良いもの。
ウイングが相手っていう点で大変なことになってるだけで。