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「で……テメェは何で俺について来てんだ」
「え?行く当てもないからに決まってるだろ?今回の『目標』って、どこにいるかが全く分かってないから…まぁ、情報入るまでは暇だしな」
「帰れ!」
叫んでから、ハレルヤは小さく溜息を吐く。
暇なのは分かった。誰かにちょっかいをかけたいくらい暇なのは。だが、だからといって自分を標的にするな。情報入るまでとか言っているくせに、絶対にその情報を受けとる気がないのも気に障る。こんなところにいたら、入ったところで伝えられる手段がない。
しかし…『目標』というのは。
歩いている小さな、本当に人形だった茶髪のを眺めつつ、ライルに尋ねる。
「あん時の宣言通り殺し屋やってんのか?」
「始末屋って言って欲しいね。一応それで通ってる」
「やるこたぁ変わらねぇだろ、ンなモン……それで、料金システムは?」
彼がどんな職業に就いていようと、正直どうでもいい。が、この返答によっては……退職願う必要が出てくるかも知れなかった。もし仮に、全て『あの時』の宣言道理に行っているのだとしたら、こちらでも多少は手を打たせてもらわなければ。
そこが分かったらしい。ライルはすっと目を細め、立ち止まった。
ハレルヤも同様にし、二人の間を歩いていたケルディムは不安そうな顔をしていた。何が始まっているのかが分からないのだろう。
「……あの時言ったとおり、だ」
「『ヤツら』の内、何人殺した」
「十六人」
「へぇ…割と多いじゃねぇか」
「料金システムのおかげでな」
「…俺は止めろって言ったハズだけど?」
「聞くとは誰も言ってない」
ハレルヤとライル、両者の間を火花が飛び交う。
一触即発のその空気を壊したのは、この状況下ではそれが可能なのは一人しかいないが……ケルディムだった。
彼は慌ててライルの服の袖を引っ張り、ハレルヤの方を見て頼み込むように口を開いた。
「こんな街中でケンカすんなって。目立ったら危ないだろ?ライルはマトモな仕事をしてるわけでもないし、そっちの兄さん…えっと、ハレルヤだっけ?とにかくアンタも都の中じゃ危険だろ?人間の定義で言う異端だしさ、な?」
「……ちょっと待て」
さらりと音になった事実に、ハレルヤはジッとケルディムを見た。
彼は今、何と言った?自分が『異端だ』と言わなかっただろうか?
……そんなこと、一言も言っていないというのに分かった、と?
驚いたのは自分だけでなくライルもだったようで、彼は驚愕の隠せない表情でケルディムを見た。
「お前……何でコイツが異端って…?」
「あ、言ってなかったっけ。俺って気配読むのが得意で、それ読んでたら結構、誰がどこだか分かるようになるんだよな…ってのは嘘じゃないけど、俺らって基本的にそういうのが分からなくもない、って感じだぜ?」
「…じゃあ、『人間の定義で』ってのは?」
「いやさぁ…人外イコール異端ってことなんだろ?なら間違いないな、とか」
色々混じってるみたいだし。
そう言って頬を掻くケルディムは、分かっていないようだ。
その能力が…どれほど優れている物かを。
だが、これは考えようによってはチャンスでもある。
ハレルヤは、彼のその能力を自分たちのために活かす方法を考え始めていた。もちろん……手を貸すようにと言いくるめる方法も同様に。