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「起きないわね……」
「起きませんね……」
まだ、三人は起きなかった。
目をこらせば胸が微かに上下しているのが分かるので、生死の心配はあまりしていないのだが……ここまでくると、さすがに異常だと思わなければならないから、本当に心配になってくる。起きてくれるのだろうか?
どうして起きないのだろうかと、マリナは隣で心配そうな顔をしているアレルヤをチラリと見て、再び三人に目を移して思った。隣の彼は最初から起きていたらしいし、自分は自然と起きることが出来たのだが。
原因は一体何だろうと、腕を組みながら考える。そう、全ては原因から。それが分からなければどうしようもないのだから。
「…移動手段に問題があった、というのはどうかしら?」
「今までもこの手段は行ってきましたが、問題は出てこなかったですよ?」
「それが今になって…というのは妙よね。じゃあ別の理由が?」
「そう考えるのが打倒だとは思うんですけど……それに、それが理由ならマリナさんも眠ってないとダメですよ」
食べ物に何か入っていたというのはない。あの時は、まだ一口も食べていなかった。催眠ガスなんてものが使われたとして、ならば自分たちが起きている道理はない。とにかく、 こういうわけで、自分たち二人だけが起きているというこの状況を説明するのは、実に難しいというか……不可能なのだ。
そもそも、この状況で二人だけが起きている時点でもう、どうしようもなく説明不可、である。自分たちだけが起きている理由と、三人が眠っている理由、それが同時に出なければならないのだから。
「これが難問に行き詰まって困っている学生の気持ちなのかしら……」
「何で学生限定…?じゃなくて、ちゃんと考えましょうよ…」
「考えているけれど……出てこないの、アイディア」
どうしたものか、とマリナは溜息を吐いた。
あと原因があるとしたら……
「外から誰かが何か、やってきてるっていうなら話は別なのだけど…」
「だったら、どうして僕らは起きているんです?」
「よねぇ…異端の力だったら、こういう物は刹那には効かないのだし…」
異端以外の力だったら話は変わってくるが……まぁ、世界が人間と異端に二分されている世界で、そんな物は存在しない。そういえば人間にも異端の能力のような力を発言できる人がいるとは聞いたたことがある。けれども、それこそ完全にそうされる理由というものが無い。
「異端以外にこういうことが出来る存在って、いるのかしら?」
「あ、出来なくはないんじゃないですか?」
「あら…どうしてそう言えるの?」
「つきし…じゃなくて………えっと、その………確か…」
言葉を探すように目を泳がせて、それからざっと十秒後に彼は口を開いた。少し焦り気味で、ちょっと何かを隠しているように。というか、セリフから何かを隠していると言うことはかなりバレバレではあったのだけど。
「ほ…ほら、人間にも異端の分みたいなのを使える人がいるんでしょう?魔術師、でしたっけ…?魔術という、魔法を真似た力を使える人たち」
「確かにいるけれど、彼らだった場合…理由が無いというか…」
「その人たちがマリナさんを狙っているとしたら?…って、それじゃダメですね。マリナさんは起きていますし」
襲う相手が起きていたらやりにくい。だから、それは無い。
そう結論を出したアレルヤに、だがマリナはクスリと笑って首を横に振った。
「私にはそういう力は通じないの」
「え?」
「これがあるから」
そうして見せたのは、服の下に隠れていた首飾りだった。