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私は気付いていた。
目覚めが、もう少しで訪れることを。
今は一体何時だろう?以前に起きたのはいつ頃だろうか。
全然分からないし、分かることも無いとは思う。
訊くにしても、私とずっと共にいた存在はいないのだから。
とりあえず、一度、私の同胞が近くへ来たことは分かっている。誰かは分からなかったが、とにかくその同胞に訊けば、最低でもどれほど眠っていたかは分かるだろう。確実に聞いた値、それ以上寝ていると分かるのだけど。
けれど別に、そんなことはどうでもいいのだ。どうだっていいのだ。
私が知りたいのは、今の状態。
世界はどのようで。
各種族の勢力図はどのようで。
神が出現しているか。
同胞は起きているか。
そういう、今の状況。
それが知りたい。
だけど。
今の私にはそれ以上に知りたいことがある。
私のやるべき事は、一体何だっただろうか?
何かがあったはずだ。
父が、かつて私たちに命じたこと。
それが一体何だったかが思い出せない。
それは非常に困ると、私は思う。
そうなってしまうと、やるべきことが果たせない。
起きたら誰かに訊いてみようか。
いや、しかしそれも何か、嫌だ。
プライドがどうのこうの、とは言わない。
が、そんなことで同胞を煩わせるのもどうかと思う。
何せ、私は一番の年長者なのだから。
だから出来れば、自力で思い出したい。
さてさて、何だっただろうか。
『簡単なことだよ』
ふいに、思考に割り込みがかかった。
何だ?と訝しく思いつつも聞いてみれば、その『声』は、笑いながら言葉を続けた。
『君は世界を壊して神を殺すのが使命だ』
誰?
『僕?僕はイオリア・シュヘンベルグ』
嘘。父は死んだ…違う、生きてる。父が死ぬわけがない…!
『でしょ?それに、この名は僕にしか語れない。知っているよね』
その『声』は麻薬のように私を侵食し、そして、私は
世界を壊し…神を殺す…
『そうだよ。頑張ってね』
堕ちた。
歪みから、歪みへと。