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 私は昔、全く別の存在だった。
 私は昔、人間、だったのだ。

 あの頃はそれが当然で、普通で、その生活が永遠に続くのだと思っていた。
 けれど。
 その思いこみは、ある日、突然に崩れ去った。

 力の発現が始まったのだ。
 最初の内は戸惑っていただけの両親も、力が完全に目覚めたときには、私をただただ、恐怖をもって見つめていた。以前の愛情の籠もった目など、どこにも見いだせなかった。

 だから、私は家を出た。
 両親は私を止めなかった。

 家を出た私には、しかし、当然ながら住む場所はどこにもない。親戚なんてもの、合ったことすらなかった。もしかしたら存在しないのかも知れないが、それは当時の私にはどうでも良いこと。とにかく、体を休める事が出来る場所……そこが必要だった。

 しかし、当時の私は子供。
 あっと言う間に、かけなしの体力は尽きた。

 路地で座り込んでいた私を今の養い親が見つけてくれなかったら、きっと、私は死んでいたと思う。衰弱でも、餓死でも、確実に。

 拾ってくれた人間は、とても優しかった。
 そして物知りで、私に何が起こったのかを教えてくれた。

 私は人間から全く別の物……魔族に、なってしまったのだと。
 人間に戻ることは無いのだと。
 異端と同じく、何らかの能力を有していることもあるのだと。
 だが異端とは違う存在なのだと。

 どれも私には初耳の話ばかりで、納得できない箇所もあったが、少しずつ吸収していった。あの人が嘘を吐くとは思えず、ならば全ては事実なのだろうと。


 それから数年経ったある日、私は一冊の本を読んだ。
 魔王と呼ばれる存在についての本。魔族の王たる存在についての本。

 その頃には私は、何人かの魔族の知り合いも出来ていた。
 彼らが言われない迫害を受けていることも、知っていた。

 だから私は思った。魔王を捜そう、と。
 庇護者を見つけよう、と。


 そして見つけたのは、双子。
 完全な魔王は、どこにもいなかった。

 しかし失望はなく、見つけたという充実感だけがあった。
 見つけただけで、満足したのかも知れない。

 とにかく、双子と接触をした私は、穏やかな方の彼と親しくなった。
 そうして、言った。私がかつて人間であったこと。今では昔とは全く違う、別の性格になっていること。それはきっと、変わってしまった実の両親に何かを思ったからだと。

 すると彼は笑って言った。なら、今の君は生まれ変わった君、なんだね……と。
 驚いている私に、彼は続けていった。
 折角生まれ変わったのだから、新しい名前を付けよう―――

 私はその時に誓った。
 彼と共にいよう。
 彼を守ろう。

 私に新しい『光』を与えてくれた彼と永遠に…

 

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