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「ふと思った」
「ん?」
「オーガンダムのことを」
唐突なエクシアの言葉に、デュナメスは何だ?と聞き返し、返ってきた言葉にあぁ、と頷いた。そういえば、彼女の話は誰もやっていない。……無意識に避けていたのかもしれない、が。
「アイツがどうかしたのか?」
「いや…何故、彼女だけが変わったのか」
それがずっと疑問で、今、ふと思い出した。
呟くエクシアは、どうやらそれがそれで本心らしく、本気で不思議そうに、少し辛そうに腕を組んで考え込んでいた。どうしても気になるのだろう。
無理もないと、デュナメスは思う。
『あの場』にいたのは自分と、エクシアと、アリオスだけ。そしてその三名だれもが彼女が変貌する様を見た。どんどん……歪んでいく様を、しっかりと、その目に焼き付けてしまったのだ。
結果としてエクシアは今のように悩むようになり、アリオスは『あの場』であった事をキュリオスに知らせないようにと気を配り、自分は……特に、変わってない。
何故だろうと、心中でこっそりと苦笑する。少しくらい、動揺しても良かったのに。
……分かっていたのかも知れない。彼女が、『あの場』の『あの出来事』を前にして、決して正気でいることができないだろうと。それを、皆のまとめ役となっていた自分は、分かっていたのかも知れない。皆のことは、よくよく見ていたから。
「エクシア…きっと、オーガンダムは、耐えられなかったんだろうさ」
「それは分かる。俺も辛かった。だが…」
「自分は彼女と同じ道を辿ってない、だろ?」
「……あぁ」
それがどうしても分からないらしい。
自分たちは同種であり、父に対する考え方も同じハズなのに、と。
デュナメスは今度こそ本当に苦笑を浮かべ、くしゃり、とエクシアの頭を撫でた。
「想いの丈が違ったんだろうよ」
「想い……?」
「アイツは、俺たち以上に父さんと一緒にいたから」
「……それもそう、か」
オーガンダムは自分たちの原型。いわばオリジナルの『人形』である。
彼女のお陰で自分たちは誕生したと言っても過言でない、姉と呼べる存在。それがオーガンダムなのだ。
自分たちと違って、最初は彼女は一人だった。けれど、傍には父がいた。
ならば、自分たち以上に父にトクベツを抱いたとして、何の不自然もない。
「だから、どうしても認められなかった…のか」
「多分。俺らは人形だけどな、心は人間とも異端とも魔族とも月代とも、誰とも変わらないからさ、辛すぎたらきっと逃げ出すんだろ」
「俺たちも…いずれ?」
「可能性だけどな」
軽く肩を竦め、そういえば、と思い出す。
今、ここにはキュリオスとヴァーチェはいない。庵の外で屋敷の探索中だ。
「……もしかしてお前、あの二人がいない今を狙って話し出した?」
「聞かせて楽しい話でもない」
「…だな」
もう一度頭を撫でるとふい、と顔を背けられた。
けれど頬が赤くなっているのが見えたから、あまり意味は成していない。