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何話目かで、刹那が服を着たまま海に飛び込むんでエクシアに会いに行くシーンがありましたが、これはその後日談です。
色お題なので一期。
10.病み上がり
「刹那、やっぱり服を着たまま海に飛び込むのは無茶だったんだよ……」
「……かもしれない」
「かもしれない、じゃねぇの。絶対にそれが現状の理由だって」
「黙れジャガイモ男」
その返事を受けて、ロックオンは軽く天(井)を仰いだ。
アレルヤと自分とへの返事の、この明らかな差。これを嘆かずして、一体何を嘆けというのだろうか。何と言うか……兄には懐いているが自分には反抗期の子供を持っている、そんな父親の気分である。
はぁ、と溜息を吐いて、刹那の使っていた体温計を手に取る。
「大分、熱は下がったみたいだな」
「まぁ、ずっと寝ててもらいましたから…ね」
苦笑するアレルヤに、自分も肩を竦めてみせる。
「その『ずっと寝ててもらう』ってのが、とても難しいミッションだったんだがな……なぁ、刹那?」
「……」
今度は何も言わずに顔を背ける刹那に、ロックオンは思わず呆れた。
どうやら病気が一番悪い頃にも動こうとしたこと、あれについての非を認めているようだが……分かっているのなら、たのむから動かないで欲しかった。寝かせ付けるのに一体、どれ程の手段を弄しただろうか…。
しかし、ともう一人の看病人の証言を思い出す。
アレルヤは、一度言えば刹那は直ぐにベッドに戻った……と言っていた。
……何だろうか、この格差は。
「あ、そうだ。刹那…リンゴ剥いたけど、食べる?」
「もらう」
「ふふっ……はい、これ」
微笑みながらアレルヤは、爪楊枝に刺さっているリンゴを差し出した。
だが、それは受け取られることなく、刹那はやや顔を伏せて動かないまま。
どうしたのだろうと、自分とアレルヤとで顔を見合わせて首を傾げていると、ふいに、ボソボソという小さな刹那の声が聞こえてきた。
「……に……い…」
「え?」
「アレルヤに……て…い…」
「僕?僕に、何?」
優しくアレルヤが訊くが、刹那はしばらくもごもごと言ったまま、ハッキリとは口にしようとしない。何か…躊躇っているらしい。
あの刹那が珍しい……と、驚きと共に彼を見ていると、次の瞬間、さらなる驚愕がロックオンを襲った。
「アレルヤに……食べさせて欲しい」
その言葉に、ロックオンは呆然とした。
今、彼は何と?
驚いたのはアレルヤも同じようだったが、指名された本人だからか我に返るのが速く、固まっているロックオンの隣で、確かめるように刹那に問いかけていた。
「食べさせてって…僕が、君に、リンゴを食べさせる…ってこと?」
「やってくれたらもう、回復するまで抜け出ない。嫌なら別に…いい」
珍しいを通り越して有り得ないほどしおらしい刹那に、ロックオンは不信感を抱いた。
何かがおかしい。彼が突然こんなことを言うのもさることながら、タイミングと言い態度といい……どこか、計算されているような……。
「ううん…大丈夫だよ、刹那。僕は構わないから」
「…そう、なのか?」
「うん。ただし、ちゃんと約束通り寝てなきゃダメだからね?」
だが、アレルヤはそうは思わなかったようだ。
ニコリと微笑んで、リンゴを刹那の口元へと持って行く。
それに齧り付いた刹那は…一瞬だけこちらを見て、そして。
「……!」
その表情…ニヤリと言う笑みを見たとき、ロックオンは悟った。
全ては演技でその上計算尽く。弱々しげにすればアレルヤが断る道理はないし、今まで抜け出ていたために取引(?)の価値も高まる。そして……彼が未だに病み上がりという状況では、彼の考えを知った自分が手を出すことも出来ないのだ。
「今度から、ガンダムは海の中じゃなくて倉庫かどこかに隠そうよ」
「だが、見つかれる恐れもある」
「それはそうだけど…何度も何度も風邪を引いてたら、ミッションの方も大変だよ?」
「あぁ、成る程…」
その後は何事もなかったかのように話を始める二人を眺め、ロックオンは決めた。
次は絶対に、刹那の思うようにはさせまい…と。
R-35とかグラハムと初対面の時とかの演技力は凄かった…ですよねぇ…。