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いや、太陽関係ないでしょう!?
っていうツッコミが入りそうな……。
1:太陽
「起きろって、な、ウイング……ウイングってば」
「…………あと五分………」
「それどころじゃないんだって!」
暖かな手に揺り動かされ、のろのろと目を開く。
室内はまだ暗い。ちょっと先の風景が見えないくらい。
絶対にいつもの起床時間よりも早いだろう、これは。
どうしてこんなに早く起こしたのかと文句を言おうとして、固まった。
「オレがどうなってるか……分かるよな?」
暗闇のせいでよく見えないが、人間の形が確認できる。
それはまだいいとしよう。
問題は、その人が彼の知り合い(もちろん人間じゃなくてMS)と同じ声で、同じ気配であることだ。
「………人間になったのか?」
「起きたらこうなってたんだよ……で、お前もなってるみたいだけど?」
言われて気づく。
普段よりも大きくなった体はベッドからはみ出し、落ちている。手にはきちんと五本の指があり、膝もちゃんと曲がるようになっていて。
自分も、本当に人間になっていた。
「……これが噂に聞く『擬人化』というやつか?」
「そうかもな~…………って、そんな暢気にしてる場合じゃないだろ!?」
……このノリは間違いなくデスサイズだ。確信を持って言い切れる。
それにしても、彼は焦りすぎている気がする。そもそもいつもなら焦らず、『おもしろいな~、これ』とか言っているはずなのだけど。
まぁ、それは置いておいて。
室内はいまだに暗いままだ。カーテンを閉め切っている上に、どうやら外からの光が乏しいようで。空は厚い雲で覆われているのかも知れない。
これでは話しにくいと、電気を入れるスイッチを手探りで探す。確か、ベッドの傍に会ったはずだが……。
すると、デスサイズはウイングが動いていることに気がついたらしい。(多分)首をかしげて、口を開いた。
「何してんだ?」
「いや、明かりをつけようと思ってな」
ガシッ
答えた瞬間、動かしていた手は、デスサイズによって動かせないよう捕まれた。
その行動を不審に思う。明かりが無くて困るのは、彼も同じだろうに。
「どうした?」
「えっとな……明かりはつけないで欲しいんだけど…」
「?」
「頼むから、な?」
どういうこと分からなかったが、とりあえず、彼が本当に嫌がっているのは理解した。
それならば、無理に行動を起こさない方がいい。
「分かった」
「サンキュッ!良かった……こんな顔、見られたらオレ……」
「顔?」
「あ、いやいやいや、何でもないから」
デスサイズが取り繕うように言う。
が、もう遅いだろう。あそこまで言ってしまったら。
つまり、彼の今の顔がどうにかなっているのだ。
…おおかた、凄く可愛らしいとか、そういうのだろう。ものすごく変な顔、というのも可能性としてはあるのだが……どうにも想像ができない。
興味はあるのだが、ここは彼の意思を尊重しよう。
「なぁ、他のみんなもなってんのかなぁ?」
「オレたちだけ、ということは無いと思うが」
「だよなぁ……あ、でも、こっちのほうが料理とかは楽そう」
「手足が長い分か?」
「ていうか、腕が長い分な。足は料理には関係ないって」
「…それもそうだな」
と話していると、突然窓の方が明るくなった。
カーテン越しにだが太陽の光が中に入ってくる。
……したがって、デスサイズの顔も見えてしまったわけで。
思わず固まり、彼も固まったところで、光が無くなった。
また、暗くなる。
沈黙。
「…………見た、よな?」
先に口を開いたのはデスサイズの方。
ここで彼のためを思って、「いいや、見ていない」と答えることもできる。
が……ここは素直に答えた方がいいだろう。
「あぁ、見えたな…」
「そっか……」
表情が見えなくても分かる。絶対に彼は落ち込んでいる。
それはもう、嫌だろう。
あんな、
あんなふうに、完璧に少女のような容姿になっていたりしたら。
「なんで太陽いきなり出てくるんだよ……」
「運が悪かったな」
「他人事みたいに言って……」
太陽と風と雲の素晴らしい気まぐれによって。
……いや、無理ありすぎるんじゃ……と思いますが。
デスサイズが可愛らしくなっているのはあれです。ワタリの趣味です。
ちなみに、ウイングは普通に格好いいです。