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女の子中心だけれど、やっぱり彼はからませますとも。
それにしても……なんか、ワタリは最近、お題中心に生きている気がするんですけど……?
あれぇ……?
01.折りたたみ傘
「うわぁ……」
少しだけれど久しぶりにお休みがもらえたから、大きなデパートに買い物に来た。
色々と物色してさあ帰ろう、と入り口まで来たときに雨……というのはかなり酷いと思うのは自分だけだろうか。
何でなのかなぁ……何か悪いことしたっけ?
ため息を吐いて空を見上げる。
空はどんよりと曇っていた。デパートに入ったときはもっと、さんさんと太陽の光が降り注いでいたのに。
これって、詐欺じゃないのかな。
本気でそんなことを思う。だって、そのくらいの変わりようだったから。
そんなことよりも…どうやって帰ったらいいんだろうか。雨が降ると思わなかったから、傘なんて持ってない。
にぃにぃズに迎えに来てもらおうか……いや、それはダメ。ミハエルはともかくとして、ヨハンは本当に疲れているようだったから邪魔をしちゃいけない。ヨハンが疲れ切ってしまったら、誰がネーナたちを纏めれる?
だから、自力で何とかしないといけないわけだが。
「残念なことに、お金が無いんだよね……」
さっきまでの買い物で、もらった小遣いは全部使い切ってしまった。ので、タクシーを呼ぶお金どころか、傘一本買う余裕はない。さっきまでの行動をちょっと後悔する。
ということは……濡れて帰れというワケか。天気も結構イジワルだ。
自分が濡れるのは仕方がないとしよう。だけど、買ったものが濡れるのは遠慮したい。折角買ったのに濡れてしまったら、それはちょっとどころではなくかなり嫌。
荷物を庇い庇い行くのにも限界があるだろうし……雨が上がるまで待てばいいのだろうけれど、雨はしばらく上がりそうにないから、それも無理。あまり待たしてしまうと、にぃにぃズが心配してきてしまう。それじゃあ、さっきの心遣いが無意味になる。
「あれ、ネーナ?」
んー、と唸って考え込んでいると、ふいに後ろから声がした。
ばっと振り向くと、そこには見知った顔が二つほど。
刹那と、アレルヤ。
「え?どうして二人ともここにいるの!?」
「それはこちらが訊きたい」
「僕らは夕飯の材料を買いに来てたんだ」
あまり親切な回答をしない刹那と、ちゃんと返事をしてくれるアレルヤ。なんだかすごく対照的。
「そういうネーナこそ」
「私はお買い物だよ。久しぶりに行ってもいいって、ヨハン兄が言ってくれたから。だけどこの雨で……ちょっと困ってるの」
「たしかに急だったからね……あ、そうだ」
何か思いついたらしい。アレルヤは持っていた袋に手を入れて、がさごそと何かを探し始めた。
それからしばらくして出てきたのは……折りたたみ傘?
「これ、貸してあげるよ」
「アレルヤ、こいつにそんなことをする必要はない」
「刹那……こういうときはお互い様だよ?」
「知らない。そうだとしても、こいつはダメだ」
「ちょっ……なによそれっ!」
少しはアレルヤを見習えばいいのに。
頬をふくらませて睨みつけても、刹那は動じず視線を送ってきた。
「俺はあのことを忘れていない」
「あのこと……?」
自分は刹那に何かをしただろうか……?
腕を組んで思い返そうと考え込む。
ちらりと顔を向けるとアレルヤも同じようにしていた。彼も分からないらしい。
「…刹那、僕、分からないんだけど」
「私もわかんなーい!」
「………………初対面の時の話だ」
言って、ふいっと顔をそらす刹那。
「……初対面の時?えっと……」
アレルヤはまだ分からないらしいけれど、ネーナはすぐに分かった。
あれだ。あのキスだ。
あれをまだ根に持っているのだ、彼は。
思わず呆れた。あのくらい、軽く水に流せばいいのに。
「しつこいなぁ……」
「…うるさい。あの後俺がどんな目にあったか知りもせずによくも……」
「……?何かあったの?」
聞き返すと、刹那は慌てて口を押さえた。失言だったらしい。
にまぁ、とついつい笑みを浮かべる。いいとっかかり。これを足がかりにちょこっとだけ、刹那をいじめてみよう。
そう思ったんだけれど。
「ねぇ、二人とも……雨が強くなってるし、早く帰った方がいいと思うんだけど……」
横から申し訳なさそうにアレルヤが口を挟んでくるものだから、止めざるを得なくなった。だってアレルヤの言うことだもの、ちゃんと聞かないと。
それは刹那も同じだったらしく、彼も黙り込んだ。
「ネーナ、じゃ、これ使ってね」
「でも、アレルヤのは?」
「僕は刹那のに入れてもらうから」
聞いた瞬間、刹那がとてもうらやましくなった。大好きな人と相合い傘……いいな…。
受け取りながらこんなことを思っていたら、刹那がフフンと笑ってきた。
少し、イラッとくる。さっきまでアレルヤの傘がネーナの所に行くのを阻止しようとしていたくせに、こうなったらすぐに手のひらを返して。なんて調子のいい話。
「そろそろ僕らは行くね?」
「あ、うん……ありがと、アレルヤ」
「どういたしまして。またね、ネーナ」
「うんっ!またね!」
アレルヤは笑顔で、刹那は仏頂面で……行ってしまった。
一人残されてしまったネーナは、しかしとても満ち足りた気分だった。
今、手の中にアレルヤの物がある。その事実がなんだか幸せな気持ちにさせるのだ。
そして何より……
「これ、帰しに行かないとねっ」
会いに行く口実が、またできたことが嬉しかった。
いつ行ってあげよう?クッキーぐらい持って行った方がいいだろうか?服はとってもおしゃれなのにしてみようか?そうしたら、彼はどんな反応をしてくれるかな?もちろんにぃにぃズと一緒に行くつもりだけど……やっぱり一人で行ってしまおうか?いやいや、それは絶対にダメ。そんなことをしたら、二人ともに怒られてしまう。
次会う時を今から楽しみにして、ネーナは傘を開いた。
刹那はあのネーナの行動の後、ロク兄におもっきしからかわれ。途中からティエリア参戦。アレルヤが止めなかったらいつまでも続く勢いだったという……。
とかいう裏設定。
その時の話、いつか書けたらいいなぁ……。