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これにも登場とかいるかな……?
登場……スターゲイザー、ノワール、アレックス
2:林檎
ことり、とテーブルに皿がのせられる。
それの上には、ウサギに切られたリンゴが数個。それぞれに爪楊枝が突き刺さっている。
ふいに、席についていた人物がそれらの一つを取った。
皿を持ってきた少女が、緊張の面持ちでその人を見つめる。
ぴん、と張り詰めた空気。
見守られる中、リンゴを取った少年はしばらくそれを見、ゆっくりと口に運んだ。
シャク、という音がする。
その音はそのままシャク、シャクと続き、最後にはゴクリ、という音と共に嚥下された。
「どうですか……?」
「……おいしい、です……」
少女にこう答えた少年は、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ものを食べる、というのは素晴らしいことですね」
「まだまだありあますから、食べてください」
「ありがとうございます」
もう一つリンゴを取って、幸せそうにかぶりつく少年。
それを見ている少女は感動にむせび泣いている。
「……………いや、そんな泣くようなことか………?」
そんな様子を見て、思わず突っ込む。
すると、少女が驚きの声を上げた。
「ノワールさん、これはすごいことなんですよ!?」
「それは分かるが……」
十分すぎるほど分かっている。彼女より少年といる機会が多いから尚更に。
だけれども、そこまで感動するようなことかというのが。
ここに少女の兄がいたら、上手いぐあいに切り返すのだろけど。あいにく自分は彼ではないから、どう切り返すべきかイマイチ分からない。
「ノワールさんも食べますか?」
新しいリンゴを差し出しながら、最初の少年が口を開いた。
相変わらずのマイペースっぷりに呆れる。
「今はいい」
「そうですか」
少年の返答に違和感を覚えた。
それの原因は分かっている。どうしてかは知らないけれど自分たちは朝起きたら人間になっていて、その影響か知らないが彼の喋り方が変わってしまったのだ。言葉遣いが変わったわけではなくて、今までカタコト喋りだったのに一気になめらかな喋りになったのだった。しょっちゅう一緒にいるから、その分とても妙な感じがする。
「スターゲイザー、食べれるのが嬉しいのは分かるが……」
「大丈夫です。八分目で終わります」
少年……スターゲイザーは答え、五つ目のリンゴに手を伸ばした。
……そんなに食べていて平気なのか。ご飯が食べられなくなるのではないのか。
そう言いたかったが、そこらへんは考えているだろうと思い直す。
まぁ、元の姿では彼は食べることができないらしいから、今のうちにしっかりと堪能しておくのもいいだろうし。
「アレックスさん、ありがとうございました」
「いいんですよ。お昼は何にしましょう?」
にこやかに話している二人を眺めながら、壁にもたれかかる。
それにしても、この現象はいったい何だろう。まさか、こんなに素晴らしい超常現象を体験できるとは思わなかった。ここにいて、本当に正解だった。
しばらくはこのままでもいいな、と思いながらノワールは目を閉じた。
お兄さんがいないのは、いろんなところに確認に行ってるから。