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この状況はあり得ない。
あってはいけない。
「アレルヤ?誰だ、それ」
「刹那君……それって本当に、僕らが知っているヒト?」
「……」
良く分からない研究所から出してもらって、マリナとシーリンと共に、自分が宿泊している宿屋に辿り着いたのが数十分前。部屋に残っていた三人を見つけたのが数分前。彼らを見て不安に駆られて質問をしたのが数秒前。そして、答えが返ったのがつい今であった。
返ってきた答えに、刹那はしばし、硬直した。
有り得ない。その言葉だけが頭をグルグルと回る。
「ほら刹那、やっぱり貴方の勘違いよ」
「俺、の…」
「だってみんな知らないって言うんだもの」
確かに、皆がそう言う。知らない、と。
ワケが分からないという顔のロックオンに、苦笑を浮かべているカタギリ、無言でいるヨハン。マリナとシーリンは道中で何度も確認をした。
「…パーティで、ティエリアと一緒に出る役は」
「……?ソーマに頼んだんじゃないか。昨日の夜のことだぞ?忘れたのか?」
「昨日の夜……?」
「そうそう。結局むこうにいる間には決まらなくて、こっちで頑張って決めたんだよ。忘れちゃったのかい?」
穏やかに言うカタギリの言葉を、刹那はどこか遠い世界の物のように捉えていた。
決めたのは昨日の夜ではなく、一昨日だったハズだ。それに一緒に出るのはアレルヤで、変身能力を使用できるから、それを使ってどうにかしようという話だったハズ。
それが、どうして。
「では…今いない他のメンバーは?」
「ネーナとミハエルは散歩。沙慈とルイスも同じだな。グラハムはいつの間にかいなくなってて……あぁ、ティエリアとハレルヤも。ソーマはお前と一緒に出たんだっけ…って何でお前、一人なんだよ?」
「…色々とあった。で…いつの間にかいなくなった、とは?」
「本気で分かんなくてな…ハレルヤは誰かを探しに出てたってのは分かる…お前を捜しに行ってたんじゃないのか?」
…それは有り得ないを通り越して実現不可だ。
ハレルヤが、わざわざ自分を探しに来るようなことがあるわけがない。それこそアレルヤに頼まれないかぎり。だが、アレルヤは刹那と一緒にいた。ソーマも当然ながら。だからアレルヤが頼めない以上は、ハレルヤがこちらに来ることもない。
なのに何故来たか?
それはどうせ、アレルヤを探すために違いないのだ。
「……刹那、少し良いか?」
「…ヨハン・トリニティ……?」
「話したいことがある」
今までずっと黙っていたヨハンが、ふいに口を開いた。
こんな大事なときに何を……と思ったのだが、彼の真剣な目に何も言えなくなる。ヨハンはどうやら、とても重大な何かを話したいらしい。
だから素直に了承して、大人四人組には部屋に残ってもらい、自分たちは部屋の外……つまり廊下で話をすることにした。
バタンとドアを閉めて、刹那はヨハンを見た。
「話、とは」
「…その前、訊きたいことがある」
そう前置いて、彼は続けた。
「何故、あの四人はアレルヤのことを忘れているんだ?そして…どうして君と私は覚えている?…理由を知っていたら、教えて欲しいんだが」