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決戦日だねぇ……みんな、大丈夫かなぁ?
なんか、何かをUPしたい気分だったんだ。
01.山盛りキャベツ
こそり、と路地から顔を出す。
そこは市場らしく、彼の知らない物がたくさん置いてあった。
そして、それと同じくらいたくさんの人がいた。
「うわぁ……すごいね、ハレルヤ」
『そうか?』
自分だけ存在を知り得るもう一人の自分に話しかけると、返ってきたのは一言だけ。
「感動がないなぁ……」
『感動するようなことでもねぇだろ』
「それは、そうだけど」
でも、こんなにたくさんの人間がいるっていうのが凄い気がするんだけど。
言うと、半身は呆れたように嘆息した。
『あのなぁ……施設にいたときもいただろ、このくらい』
「いたよ?けどね、こんなにたくさんの大人が、みんな違う服を着て笑っているのがちょっと、珍しい気がしたんだ」
『……あぁ、そういうことな』
納得してくれたらしい。
施設にいたときは、白い服。それだけしか着ていない。大人たちも決まった服を着ていて。それが制服だと知ったのはあの場所から出てからだった。
だから、色とりどりの服は珍しいし、あそこの大人たちと違って笑いながら仕事をしている彼らを奇妙に思う。
「僕も、あんな服を着るようになるのかな?」
『知るかよ、んなこと』
「…もうちょっと話し相手になってくれてもいいんじゃない?」
『眠いから面倒なんだよ』
彼らしい理由だ。
苦笑し、路地から出る。
人の波に入り込むともう、軌道の修正は難しい。流されていくだけ。海で漂流する人もこういう気分なのかな、と思う。自分の思ったとおりに進めないし、どこにいくかも分からない。
そうして流れ着いたのは、野菜を売っている露店の前。
「おやおや、小さなお客さんが来たねぇ」
笑っているのは、その店の主。
その優しそうな中年の女性は、こちらに来いと手招きをした。
近づくと、頭を撫でられた。
「可愛いねぇ……一人かい?親御さんは?」
「親はいません」
女性の問いに首を振る。ちなみに一人かどうかというのは本当はハレルヤがいるから違うけれど、それを彼女に言っても意味はない。彼女には彼の存在は分からないから。
ここら辺にはストリートチルドレン(だったっけ、ハレルヤ?『……知らねぇよ』)が多いから、一人でも不自然ではないだろうし。
「そうかいそうかい……寂しいねぇ」
答えた後、女性は悲しそうな顔をした。どうしてだろうか。親がいないというのは、そんなに悲しいことなのか。実際に持ってみないと、分からないのだろうか。それとも、自分の感覚が変なのか。
ただ、寂しいというのは違うと言い切れる。だって、ハレルヤがいるから。彼がいる限りアレルヤは一人じゃないから、寂しいわけがないのだ(ね、ハレルヤ。『……うるせぇ』照れないでもいいんだよ?『だから照れてねぇっ!』)。
それはともかく、彼女の顔を見ていられなくて顔を逸らすと、目にはいるのは山盛りの商品たち。トマトにニンジン、ジャガイモもあったしキャベツもあって。これだけの量が一日で売れるのだとしたら、それはとても凄い気がする。売りさばける人もだけれど、買いに来る人も。
「野菜が気になるのかい?」
「たくさんあるなぁって思って」
「よかったら、これ、あげるよ」
そう言って女性はキャベツを一つ、取ってアレルヤに渡してくれた。
「え……でも、お金無いですよ?」
「いいんだよ。人の親切は取っておくものさ」
『そうだぜ?もらえるもんはもらっとけ』
「………じゃあ、もらいます」
彼女だけでなくハレルヤにまで言われ、渋々アレルヤは受け取った。皆が金を払って受け取る物を無料でもらうことに、ちょっと引け目を感じたのだけれど。
「ありがとうございます」
「どういたしまして…元気でね」
「はい。さようなら」
最後に一度だけ抱擁を交わして、アレルヤはまた、人の波へと戻っていった。
優しかった女性からもらった、キャベツを抱えて。
山盛りキャベツで何を書けと
言うんでしょうか。書いたけど。
ほんと、迷った……。