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「あ……アリオス」
「ん?」
グラハムの物ではない声に、アリオスはクッキーを食べる手を止めた。
この家には自分とあの金髪狩人しかいないはずである。それなのに別の声、ということはつまり、新しく誰かが入ってきたと言うこと。しかも名前を呼ばれたことから、自分を知っている誰かだということになる。
確認するべく顔を上げてみれば……見たこともない誰かがいた。
ただ……背丈と髪と、瞳の色。そして雰囲気。
そこから、自分たちに通ずるモノだとは分かったのだが。
とにかく彼女は一人ポツンと部屋の入り口に立っていて、自分の傍にいるグラハムには目もくれず、とにかくアリオスだけを見ていた。
「……誰だテメェ」
「…酷い…」
「何がだ?」
「私を忘れるなんて…」
本気で傷ついているような声音の少女に、アリオスは眉根を寄せる。
そんなことを言われても仕方がないというのに。自分には彼女の正体についての心当たりすらないのだから。
グラハムもどういうことかと視線をこちらに寄こしているが……だから自分は知らないというのが聞こえないのだろうか。とにかくアリオスには目の前の彼女が何者かが分からないのだ。
そんな自分の心理を読み取ったのか、彼女は無表情のままに溜息を吐いた。
何で気付いてくれないのかと言うように。
……むしろ、こっちが気付いて欲しい。自分が彼女を知っているのだとしても、これではヒントがあまりに少なすぎると言うことに。
「じゃあ…」
「何だよ。ようやくヒントを出す気になったってか?」
「キュリオスに止められたのに私を振り回してお父様の気に入っていらした壺を割ったことは誰にも言っていな」
「あぁ分かった!分かったからそれ以上言うんじゃねぇよ!」
ソレを知っているのは、自分と、キュリオスと…振り回されていた当人。
ったく…と頭をグシャグシャと掻いて、それから彼女……ダブルオーを見た。
「テメェかよ…電波女…」
「ダブルオー」
「ちゃんと呼べってか?テメェは電波で十分だろ」
咎めるような響きを持った言葉を軽く無視して、アリオスは座っていた机の上から飛び降りた。
それからグラハムの方へと向かう。
「鈴の君……彼女は?」
「だから君ちが…ってそりゃ今は置いとくか。アイツは剣だ……ん?どうして人型だ?」
「今更…」
ポツリと呟いたダブルオーを軽く睨め付けて、続きを促す。どうして彼女がこおにいるのかも、同様に聞いておく必要がある。
そこは分かったのか、普段は饒舌でない(自分の過去の汚点を話したときのは例外)彼女も、比較的長く話した。
「原理は分からないけれど、力の底上げが起こっているみたい。アリオスも経験は?」
「した。成る程…そういうことか……んじゃ、何でここに?」
「クラウスに。今はいない」
「……クラウス?」
その名前に反応したのは、グラハムだった。
知ってるのか?と問えば、あぁ、という返事。
「彼は都に対する反乱軍の、リーダー格に近い存在だ」