Another Story （W） 第四話：悪夢のビクトリア

こちらも久々。今日上げた二つの話は、両方とも久々なジャンルというか…。
…はい、もう少しバランス良くいけるように頑張ります。

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　後味の悪い戦闘の後、ナタクは歩く五飛の後を精神体のままでついて行っていた。機体の中に一人だけ……というのも何だろう、と考えた末の行動である。
　色々なところをグルグルと歩き続け、辿り着いたのは……自分の本体がある場所。
　予想通りだったのでそのまま歩いて近付いて……
「あ、やっと来たね」
「遅いぜー？」
「……」
　何か、見覚えがあるメンバーがいた。
　しかも実体化状態で、鍋でぐつぐつと何か煮込んでいる状況で。
「これは……」
「すまん五飛！」
　機体を隠している場所が見つかった云々よりも、目の前の情景が信じられないという衝撃の方が大きかったらしい。呆然としていた五飛の後頭部を、素速く実体化したナタクは出現させた武器で思い切り殴打した。
　そのままフラリと倒れる彼の体を後ろから支え、ちゃんと気絶をしていることを確認してほう、と息を吐く。この調子なら、とりあえず……後ろから殴られたことはともかく、何か信じられない光景を見た、という現実の方の記憶は消去されていそうだ。
　ゆっくりと地面に横たえて、それから三人の方を向く。
「……お前ら、何故ここにいる……？」
「んー…暇だから。あ、鍋はみんなでつつこうって話で」
「デスサイズ……俺が聞きたいのはそういうことではなくて、何で実体化してここにいるのかということだ！五飛に見られたらどうする気だったんだ！？」
　実際に見られれているが、そこは今は触れないでおこう。
　…しかし、サンドロックは大丈夫だよ、とクスクス笑いながら口を開いた。
「まぁ、見られないに越したことはないのかもしれないけど、だからって見られてはいけないってルール、どこにもないんだよ？」
「……だが…」
「ま、君のパイロット……五飛っていうんだね…とにかく、彼に関しては、見られたくなかったら君がどうにかするって信じてたから」
　そう微笑む彼を見て、ナタクは一気に脱力した。
　ガクリと膝を折って地に手をつき、一言。
「そんな信頼はいらん……」
「まぁまぁ。ナタク、豆腐でも食って元気出せよ」
「そこで豆腐を出すというチョイスが良く分からんが……もらう」
　もう五飛がどうのこうのと、そんなことを言う気力はなかった。
　大人しく鍋を囲む輪の中に入り、デスサイズから豆腐の入った器と箸を受け取る。
「……ところで」
　豆腐を型くずれさせずに一度で取ったナタクは、三人を見ることなく問いかけた。
「誰が立案者だ」
「え？鍋パーティの？サンドロックだけど」
「暇だったからねぇ…だって僕とヘビーアームズって、今って修理中だから。ね？」
「……」
　コクコクと頷くヘビーアームズを見ながら、ナタクは納得した。たしかにこのメンバーの中なら、彼が立案者である可能性が最も高い。
　とりあえずサンドロックとヘビーアームズが一緒にいることを覚えておくことにして、そういえば……と辺りをぐるりと見渡す。
「ウイングは？」
　瞬間、ボキリ、という、箸の折れる音がした。
「……！？」
　何が起こったのかと音が鳴った方を見れば……デスサイズが片手で持っている箸が、真ん中で真っ二つに折れていた。器の方は丈夫なので無事だが、ミシミシという音が聞こえてくる気がする。その内……割れてしまいそうだ。
　うつむき加減で表情の見えない彼に、恐る恐る声を掛ける。
「……何があった」
「…アイツのパイロット、本当に今度会ったら……っ」
　だが、こちらの声は届いていないようだ。
　本当に何があったのだと首を傾げていると、あぁ、とサンドロックが苦笑を浮かべた。
「あ…そのね、ウイングのパイロットがデスサイズのパーツを勝手に取って、勝手に使ってウイングを修理したらしくて」
「それで怒っているのか…」
「…らしいよ。で、その繋がりで、ウイングの顔見たらパイロットの方も思い出すからって事で……彼に向かって『ウイング』とか『ヒイロ』という言葉は厳禁。だから置いてきたんだって。ウイングの顔見ても思い出すそうだし。だから、基本的にはこういうのを止める役の彼も案に乗ってきたんだよ。ウイングの顔見たくないって」
「厳禁なのに言い過ぎ…」
　珍しくポツリと呟かれたヘビーアームズの言葉に、ナタクとサンドロックはハッとデスサイズの方を見た。確かに言い過ぎである。
　そして、そんな彼は顔を上げていて……笑っていた。
「ヒイロ・ユイ…絶対に仕返ししてやる……」
　声音はもう…地獄の底から這い出てきそうな程の、酷く恨みの籠もったものだったが。
　人間で例えれば勝手に内蔵や骨などを取られるのと同意語で、それでも機械だから大問題にはならないが…やはり嫌だろうと、ナタクは現状を納得を持って受け入れる事にした。

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人間で言うと内蔵…ちょっと想像するとアレですが、表現的には間違えてないと思う。