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池田さんも出したいとか思いつつ。
カタロンです。ていうかマリナ様とシーリンと+クラウス、っていう感じ。
04.停電
明かりの消えた天井に、あら、と顔を上げる。
突然の暗闇。どうやら停電に見舞われているらしい。
この基地に身を寄せて、早数日。今までこんなことは無かったので少しばかり戸惑うが、まぁ、電気の通っている場所ならばこういうことだってあるだろう。手動でブレーカーを落とすだけで電気は消えるし、電気配線を途切れさせても同様。オーバーヒートということもあるだろうし、だからそれほど現状がどうこうと思うことはない。
ただ、子供たちが大丈夫だろうかと、そういう心配はある。彼ら彼女らは自分と違って、こういう事態には慣れていないかも知れない。慣れているかも知れない。どっちにしろ、今、彼らは大人もいない部屋で暗闇の中にいる。それはきっと、とても心細いだろう。
そうした理由から特に行く当ての無かった行き先を決め、くるりと踵を返す。
カツン、カツンと暗い中を響く足音を聞きながら、そういえば、停電なんて物は国では日常茶飯事だったと思い出す。今も、四年前も、その前も。
電気代というのは結構かかる。自分の住んでいた宮殿ほどの大きさならばなおのことで、金銭を節約するならまずはそこから。使わない部屋の明かりは完全に消して、場合によっては夜に明かりは全く点けないで、明かりの点灯時間を設定したりして。そうやって電気代を節約してきた。
何分、貧乏だったので。
「あら」
「……貴方、どうしてここにいるの」
そんなことをつらつらと思っていると、曲がり角でばったりと同郷の元侍女と、彼女と一緒にいることの多い組織の幹部と出くわした。
呆れ顔のシーリンに笑って返して、マリナは口を開く。
「ちょっと歩いていたらこうなって……貴方たちは?」
「私たちは他の人たちの様子を見に。本当はクラウスだけが行く予定だったんだけど……懐中電灯がなかったらしくて」
「え?」
その言葉に、マリナはキョトンとした。
停電に懐中電灯なんて、そんなの。
「それ、電池代が勿体ないじゃない」
「私も思ったわ。でも、ここの皆って基本的に懐中電灯がないと停電の中を歩けないらしくって。今日初めて知ったけれど、本当に驚いたわ」
「驚いたわ……って、私も驚くわ、それ。何で見えないの?」
「さぁ。何でかしら」
「……君たちが普通じゃないんだと思うんだが……どうやったらそうなるんだ?」
物言いたげにクラウスが溜息を吐いて、マリナとシーリンは顔を見合わせた。
どうやったら、と言われても。
「普通にしてたらなるわよ、クラウス」
「えぇ。それに電気が止められるのって日常茶飯事でしたから」
「……日常茶飯事?」
「予算が少しでも足りなくなると、容赦なく電気をカットされてしまうんです」
「九時以降は基本的に真っ暗ね。廊下なんて、何かが出てもおかしくないくらいの雰囲気を持っていたわよ?」
「でも、それっていつものことだったわよね、シーリン」
「そうね。あれが日常だったわ。酷いときは水道も止まったんじゃなかったかしら?」
「そういえば。えっと……あの時って、近くの井戸に水を汲みに行ったのよね」
「割と遠かったわよね。あと…」
「……すまない、もういい」
そう言って、カタロン幹部はどこか遠いところを見るような目になった。
どうしたのだろうと思いはしたが、多分訊いても分からないだろうと見当を付け、マリナはシーリンの手を取った。
「ねぇ、良かったら一緒に子供たちの所に行かない?」
「子供たちの?どうして?」
「ほら、暗いと子供って落ち着かないから。一緒にいたら少しでも変わるかと思うの」
「……分かったわ。じゃあ、クラウス、貴方も一緒に」
「…は?」
「だって、暗いと周りが見えないんでしょ?付いてくるしか無いじゃないの」
「それはそうだが……」
「それは良いアイディアね!子供たちもきっと喜んでくれるわ!」
こういうとき、人は多ければ多い方が良い。
手を打って喜んでいると、耳に届いたのは諦めたような溜息だった。
まぁ、アザディスタンとはいえ、まさか電気代どうこうというのはないと思うのです…が……ね。