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「嘘……嘘だ!」
「ピーリスさん?」
「どうしてお前がここにいる!」
傍にミレイナが居るのに、それさえ気にすることも出来ずに、いつもの口調すら忘れてしまって、ソーマは叫んでいた。
有り得ない。これは……だめだ。
こんなモノが目の前にあってたまるものか。
見える場所にコレがあるなんて。
何のために、必死で捨てたと思っているのか。
しかし、敵意をぶつけられているというのに、ソレはニコリと笑って、物怖じすることなく一歩、足を踏み出した。
それに対応するかのように、ソーマも一歩、下がる。頬には汗が伝っていた。
完全に目の前の現実に押されている状況だったが、しかし、それでも…尋ねる。
「お前は……『何』だ」
「マリー。マリー・パーファシーよ」
「っ……嘘だ!」
「嘘じゃないわ」
相手は笑顔のまま、立ち止まった。
訝しく思いながらもソーマも立ち止まり、やや前方にいたミレイナを自分の後ろへと押しやる。有り得ない状況である今、何が起こるか分からないのだから……少なくとも、目の前のコレからくらいは庇えるようにしておくべきだろう。
何が来る……と身構え、見据えていると、ソレはそれでも笑ったまま。
口を開いた。
「貴方がいる限り、私は存在するわ」
「煩い!私はお前を捨てたハズ、」
「捨て切れていないの」
涼やかな断定に、ソーマの体は一瞬、動きを止めた。
後ろのミレイナも気にならないほど、ソレの言葉が心に刺さった。
今、コレは。
何と言った?
「どういうことだ……っ」
「そのままの通り。貴方は『私』を、人間だった自分を捨て切れていないの」
「違う!私はお前を捨てた!」
「……ほら」
叫べば、ソレはうっそりと笑う。
瞬間、ぞくりと、背を何かが這い上がった。
違う。これは、何かが違う。
これは……
「そうやってムキになるなんて、肯定の証よ?」
「……違う」
「え?」
「お前は『私』ではない!」
『マリー』はそんな笑い方はしない。『自分』だったから、良く分かる。
ならば、これは。
毅然と、ソーマは言い放った。
「お前は偽物だ!歪められた過去だ!だから……『私』ではない!消えろ!」
断定すれば、偽物の『マリー』は消え去った。
ソーマの中の『本当』……過去を捨て切れていない、という事実を残したままに。