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自分でも信じられないけれど狩人の家で、月代、という名前を聞いて。
月代かぁ……と思いながら、ネーナはパクッとクッキーを食べた。
あの事件のことを深く知っていて、月代について説明を受けている身としては、まぁ、可能性としてはあるかな……などと思っていたのだが。
「ていうか、それ以外に理由って無いよねぇ…」
「……?」
「あ、何でもないから。気にしないで」
キョトンとした表情を浮かべるルイスに、何でもないと手を振ってみせる。実際何でもなかったし、今言ったところで目の前の女狩人が言ってしまったのだから意味はない。というか、言うのや説明するのが面倒だっただけなのだけど。
沙慈に紅茶のおかわりを頼んで、ネーナは少し考え込む。
月代が、都を支配しているという事実について。
正直……知らなかった。数日前まで月代すら知らなかったのだから、当然と言えば当然なのだけど……あの時、街についたあの時、本当に街を燃やし尽くさなくて良かったと…しみじみ思う。出来ない状況ではあったけれど、もししていたら……誰とも会えないまま、新しいことも知らないままだった。
成る程、やっぱり突然に燃やし尽くすのは問題行動だったらしい。
改めて実感して、慌てて本来の筋へと思考を戻す。
確か……月代というのは自然発生した存在で、魔族と対になる存在なはずだ。
結局の所、人間の定義だと『異端』に分類されてしまうけれど、本当は違う種族。魔族と同様に、月代は月代、魔族は魔族という種族。
そこまで思って、ふと首を傾げた。
人間と異端が対。
魔族と月代が対。
では、人間と魔族は何だろう。
単なる原材料?元となる存在?
それとも……その二つも、対なのだろうか。
それならば月代も、異端と対、ということになるのかもしれない。
何故なら世界はバランスを保とうとするから。なら、片方が対なら片方も対…なのではないだろうか?
だとして。
だとしたら。
「……ねぇ、一つ訊きたいんだけど」
「何だ?」
「月代って、何からか変異するの?」
無から物を作り出すのは難しいと、いつかヨハンが言っていた気がする。
世界なら簡単にそのくらい、あっと言う間にこなしてしまうのかもしれないけれど、自分だったら……簡単な方を選ぶ。
「さぁ……私は知らないな」
「そっか」
マネキンの答えを、さほど落胆せずに受け止める。
そんなことを知っているとは思っていない。分かるとしたらせいぜい…本当に『関係者』と呼べるヒトたちくらいだろう。自分や目の前の狩人たち、被害者のルイス、巻き込まれた沙慈、被害者にして加害者にされたミハエルも……誰も彼もが部外者なのだから、知るわけがない。アレルヤやハレルヤ、ティエリア、ソーマなら知っているかもしれないが。
それから、だとしたら……と、思ったことを反復する。
心の中でこっそりと。せっかく珍しく、難しく考えた末の考えなのだから、と。
……だとしたら、異端から月代が生まれてくるのかも知れない。
異端の亜種が月代なのかも知れない、という考えを。