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もう日も沈み、夕暮れと言っても過言ではない時間帯。
都の大通りを、ネーナたちは歩いていた。
狩人の家でのんびりとしていた異端の一向だったが、外が暗くなり始めたのに沙慈が気づき、ならば……と帰ることになったのだ。せいせいする、という顔をした炭酸が苛ついたので、ミハエルと一緒にボコ殴ってくることは当然ながら忘れずに。
にしても……とグッと伸びながら思う。
狩人の家でお茶会なんて。
「普通は無いわよねぇ……」
「……?」
「あ、あのお茶会のことよ」
不思議そうにこちらを見たルイスに、あぁと言葉の解説を付け加えた。
成る程、と納得した顔になった彼女を認め、ネーナは言葉を続ける。
「異端が狩人の家でお茶を飲んでくるなんて、よく考えたら無いじゃない?これて凄いことなのかな?だったらヨハン兄にも自慢できる?」
「……」
「あ、やっぱり?でもなぁ……心配されるかもな…」
頷いた彼女にパッと顔を明るくして、直ぐに曇らせる。冷静でしっかり者の兄なので、異端が狩人と共に……という状況には驚きより先に、心配を持ってくるかも知れない。というか、それが一般だ。
まぁ、今更な感じはある。一緒に宿に泊まっているメンバーの内の何人が狩人。この状況で『狩人は全員敵ですので注意しましょう』なんて言われたら、絶対に信じられない。
「…ま、良いけど。それよりも……遅くなったことに対する言い訳を考えないと」
「……?そのまま、あったとおりを言えば良いんじゃないですか?」
「チッチッチッ……甘いぜ、匙」
「沙慈です」
ニュアンスから何かが違うと察したのか、慌てて訂正を入れる匙……もとい沙慈。が、やはり相手がミハエルなので、軽く笑って受け流されてしまう。これだけ見たら沙慈が不憫に思えるのかも知れないけども、受け流しているように見えて実際はちゃんと聞いているのを知っているから、それ程は思わなかった。
そこが分かったのか分からなかったのかは知りようがないが、沙慈は溜息を吐いて、気持ちを切り替えるように軽く首を振った。
「……で、言い訳を考える理由は?」
「狩人の家に行った事は良いとするぜ?問題は、こんな時間までずっといたことだ」
「ほら、もっと早く切り上げて帰ることだってできたじゃない?だから、どうにか考えて怒られるのは阻止したいって事」
「……どこの子供ですか?」
「それ、失礼じゃない?」
子供だなんて。まだ二十歳になってないのは事実だけれど、それは彼も同じハズだ。そんな相手に言われるほど子供じみているつもりはない。
「ま、言い訳が通じなかったら誰かに助けを求めれば良いし…っと?」
「わっ」
などと話していると突然、ドンという衝撃に見舞われた。
よろけたところをミハエルに支えてもらって、同様に連れに支えられている小さな少年を見る。
少年の服は……特徴的だった。マフラーは長くて端が地面に付きそうなのだけど、針金が中に通っているかのように軽く横に開いた様子で止まっている。腰に巻いている紐も似たような感じである。
「えっと…ごめん!大丈夫!?」
「あ、そっちこそ大丈夫?……いやぁ、こっちこそゴメンね。彼と積もる話もあってさ、前方不注意だった」
ほんとゴメン。
そう謝った少年と、積もる話があったという男性は離れていった。