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「都の中なのに、なんでこんなに異端率が多いんだろうね……人間の街でしょ、ここってさ。僕、間違ってないよね?」
「間違ってはいませんが……今更では?」
「かなぁ……っていうか、敬語はやめようよ。僕らの仲でしょ?あ…実は口も聞きたくないくらいに僕が嫌いなら、別に敬語じゃなくても良いけど……そんなことないよね?もしも肯定したら僕は泣くからね?」
どうなのさぁ、と答えをせがんでくる様子が幼く見えて、紅龍は薄く笑った。自分などより遙かに歳を取っているとは分かっているのだが、こうしてみるとその事実をどうしても疑ってしまう。たまに見せられる知識の豊富さなどら、その事実は肯定されるべきだとは理解しているけれど。
突然笑ったからか訝しげな顔をしているセラヴィーの頭をポン、と叩いて、歩き続けながらも先ほど別れた四人組が去った方へと、ちらりと視線を向ける。悪魔の二人に、あとの二人はケットーシーだろうか。
何ともいえない組み合わせだが、都の仲に異端、という矛盾に比べればどうということはないだろう。都は人間の街であるというのに、そこに異端がいるという矛盾と比べれば。
「…ね、紅龍。君は気付いたかな?」
「……何を、ですか?」
「あー、やっぱり気付いてないんだね。いやいや、ソレが悪いとかじゃないよ?そもそも、分からない方が普通で一般で当たり前なんだからね。そーいうわけだから気にしないで」
唐突な質問に問いを持って返せば、クスクスという笑い声が返ってきた。
一体何だと灰色の短髪を持つ人形の、その碧の瞳を見る。
「出来れば、何なのかを教えていただきたいのですが」
「っとねぇ……さっきのホラ、四人組がいたでしょ?その中のえっと……うん、金髪と茶髪?な子がいたでしょ、ね。あの二人には変なイトが絡み付いてたなぁって思って差。赤い髪の子と青い髪の子は、絡み付かれてなかったけど。イトがはじかれたみたいに、周りに何て言うか……どーしようもなくて困ってる感じでいただけ。あぁ、」
と、彼はこちらを見てニッと笑った。
ぞくりと、背筋に何かが這い上がるような笑みを浮かべた。
「安心してね?君には付いていないから。それが良いか悪いかは知らないけど」
「……ですから、そのイト、というのは」
「記憶を吸い取るイトさ。細長い糸の形をした、悪意を持つ誰かの意図」
そう言って人形は嗤う。酷く、憎しみを込めて。
激しい憎悪を感じ、一瞬だけ紅龍は足を止めかけた。が、完全に止まることはなく歩みを続けた。彼のむき出しの憎悪は恐ろしいが、彼が何の理由もなく害を与えてくる存在ではないと、そのくらいは信頼している。
それに、である。彼が憎しみを抱いているのは自分に対してではない。もっと別の、イトの持ち主に対してだ。それも、紅龍が安全であるという根拠になる。
だから……そう思っていると、ふいに、憎悪の感情が感じられなくなったことに気付く。
視線を下げれば、バツの悪そうな元、杖の姿。
「……紅龍、ごめん」
「いいえ。貴方の新しい一面が見られましたから」
「それだから別に良いって?…そうは言われてもなぁ……いや、ホントにゴメンね。このイトの持ち主、見当が付いちゃってて。いやはや困るよねぇ…」
全くいつも通りにセラヴィーは笑い、溜息を一つ吐いた。
あれ程の感情を一気に表したからか、本気で疲れたらしい。
「あー……もう最悪。このイトが見えるのって、僕とアリオスと…せいぜいオーガンダムくらいのものだよ、絶対に。この気持ち悪さを他の誰かに教えられないのは辛いなぁ……もーやだ。何で僕らにこーいう能力をくれたのかなぁ、僕らのお父さんって」
「嘆いても仕方がないでしょう」
「うん、まぁそうなんだけどね?でもやっぱりさ、少しは恨み言を言っておきたくもなるってものだよ。僕は、言っておくけど、あのイトはもう見たくないんだよ」
だって、本当に気持ち悪いんだもの。
そう続けるセラヴィーの表情は、真剣そのものだった。