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久しぶりのAnother Storyです。
そして、これほどまでに題名を無視した話も……いや、あるのか。
この状況はどうするべきなのだろう……と、ウイングは冷や汗を流していた。
理由は簡単。目の前に、武器を構えた仲間の一人がいたからだ。
「……すまない…一つ訊かせてくれ」
「んー、何?遺言?」
「……違う」
「じゃ何?遺志でも残してくワケ?」
「遺言と大差ない気がするのは俺だけか……?」
「細かいことは気にしたらダメだって……と言うわけで」
相手は、ニコリと笑った。
「大人しく撃たれてくれる?」
彼の笑みは、いつもならば明るく、自分たちに元気を分け与えてくれるような物だ。あるだけでありがたく、何度も助けられてきた笑顔。
だが、今の笑顔は。
その笑顔の裏にある容赦のない敵意を感じ取り、背筋が凍るような感覚に襲われた。
マズイ。この状況は酷くマズイ。何がマズイかと言えば、やはり自分の修理のために彼からパーツを頂戴してしまったことだろうか。ウイングの意志でなかったとして、それで彼が怒るのを止めてくれるわけもない。彼から取ったパーツによって動いている時点で、自分も否応なしに共犯になっている。
何と言うか……貧乏くじとはこういうことを言うのだろうか。
溜息を吐き、説得するべく口を開く。
「…デスサイズ」
「何?ようやく遺言残す気に?」
「いや……」
というか、そもそも自分たちに死という概念は無いはずでは。
そう思ってあぁ、と納得する。
だからここまでの態度が取れるのか。
便利だとは思っていたが……不便になることもあるだろうと思っていた性質だったが……まさか、ここまで裏目に出るとは思わなかった。
死ななくても、痛いものは痛いのだ。
「……そうではなくて、分かっているか?」
「何のこと?」
「例えば…お前の近くに敵MSがいることには」
「あぁ、そういえば。でもこんなん、少し怪我しても簡単に倒せるだろ」
「怪我をすればその時点で『簡単』とは違うと思うが…」
「細かいなぁ…いいじゃんか、別にそのくらい」
「いいのか?」
「俺が怪我するだけだったらいいんだって」
痛くても、仕返しできるなら安いもんだろ?
そう続ける彼の声音に、少しばかりの戦慄を覚える。
先ほどから分かっていたことだが、改めて。
彼は本気だ。
しかし……だとすると、解せない。
「……何故、そこまで怒っている?」
「ってーと?」
「いつもなら軽く流しそうな気がする」
彼とは、そういう相手であったはずなのだが。
本気で分からず悩んでいると、あのな、と優しくそれでいて怖い声が届いた。
「お前、内臓を勝手に盗られる人間の気持ちを考えてみろよ」
「う……」
「しかもな、断りもなく勝手に。いいか、勝手に!だぞ!」
言い返せないでいるウイングに畳み掛けるように言うデスサイズを見て、抱いていた疑問が一気に氷解した。
つまり、彼は勝手に持って行かれたことを怒っているのだった。
まぁ、あんなことをされれは怒るだろう。
それが分かったウイングは、素直に謝罪の言葉を述べた。
「……悪かった。止められなかった俺にも責任はある」
「ん…いやまぁ……」
あまりにあっさりと謝ってしまったからか、彼は少し居心地の悪そうな様子でモゴモゴと口の中だけで言葉を転がし、それから溜息を吐いた。
「お前さぁ……そんな簡単に謝ってもらったら、俺も怒るに怒れないっていうかさぁ…」
「それもそうだな。すまない」
「だぁかぁらぁ……いいや、もういーや…」
そして、デスサイズは脱力したように笑った。
「俺、何だか疲れたから敵のMSはよろしく」
「言われるまでもないな」
始めからそのつもりだったし。
頷いて、それからウイングは引き金を引くべく力を込めた。
あの短い間によくもこれだけのやり取りを、というツッコミは無しの方向で。
でも、部品を勝手にって…ねぇ?