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都の中心にある高い塔の、その最上階に管制室……とでも形容できそうな部屋がある。
その部屋の壁の一つに取り付けられているのは巨大なスクリーンを持った画面。スクリーンはスクリーンの中でいくつもの画面に分けられており、そこに映るのは都の様々な場所の現在の状況。監視カメラに写される全ての情報だ。
別の壁にはたくさんの小さなランプが付いており、各ランプの下には長方形の白いプレートが付いていた。これが、異端の能力発動を察知する機械の、その発動の様子を表すものだ。明かりの点灯していないランプに光が灯れば、それは異端の能力が発動したという事なのだ。
ただ、異端察知の機械は都の全ての場所で有効であるわけではない。そこは自分たちも分かっていることで、だからこそ監視カメラがあり、それも設置されていない場所があることも把握している。
無効地帯があると知れば、異端たちは能力を使う。だから、その場所は異端をあぶり出すのに最適な場所。大人しくしている異端は良いが、何かをしようとする異端は必ずそこへ行く。大々的に何かが行われれば、そこへ行けば犯人がいるということだ。
まさか、そういう場所があると知ってなお、カメラや察知機械がある場所で力を使おうと考えるモノはいないだろう。そんなことをするのは身の程を知らない馬鹿であり、放っておいても確実に自滅するであろう愚か者。自分たちは強い力とそこそこ頭も良い異端に目を向けていればいい。そんな弱小者は狩人が勝手にどうにかする。
だが。
「暇よねー……誰か何かやってくれないかしら」
「ヒリング、冗談でもそういうことは言わない方が良いと思うけど…」
「冗談じゃなくて本気よ」
退屈なんだもの、と溜息を一つ吐いて、リヴァイヴの手から弁当を奪い取る。せっかくの支配階級の夕食が弁当一つだなんて。もしも自分たちの存在を知っている誰かがこの場を見たら、一体、なんて思うだろうか?おもしろそうだから適当に探して連れて来てみようか。その相手の反応もだし、リヴァイヴの反応も楽しそうだ。
などと思いながら、そういえば……と辺りを見渡す。もう一人、ここにいた月代がいなくなっている。いつの間にか。
「ね、ブリングは?」
「買い出し。君も菓子を頼んでいたじゃないか」
「そうだっけ?」
「そうだよ。何忘れてるんだか……」
「ゴメンゴメン。だって暇だったし」
「理由になってない」
笑って誤魔化そうとしてもそうはいかず、じとりと向けられる視線に笑いがいつしか乾いた物になっていたのは仕方がないことだろう。別に彼が怖いとは思わないが、そういう視線にはちょっと弱い。
何とか話題を変えようと、アレコレと考えてみるのだが……何と言うか、どれを選んでも話題を引き戻されそうな気がする。それでさらにチクチクといたい場所を疲れ続けるのだ。その自分の様子が目に見えるようで、少し悲しい。リヴァイヴは遊ぶには楽しい相手だが、一度敵に回すと少しツライ。
「ね……ねぇ、リヴァイヴ」
「何?ヒリング」
「あ…あのさ……」
さて、何を話せば彼をこの話題から遠ざけることが出来るだろうか。
ヒリングは腕を組んで悩み出したのだが、しかし、それは必要のない努力だった。
何故なら、室内に警報が鳴り響いたから。
ソレが指すのは即ち、誰かが異端能力察知危機の傍で、異端の力を使ったという事実。
「……リヴァイヴ、どうする?」
「どうするも何も…行きたいんだね?」
「うん。ダメ?」
「…後で君がリボンズに謝るんなら」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと謝るから。だからリヴァイヴも行かない?」
「それこそダメ。一人は最低でもつめておかないと」