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「思うんだけどさ、やっぱり君が羨ましいよ。ていうか何よりも、何でこんな力を僕にくれちゃったんだろうって、少しお父さんを恨みたくもなるよ。あ、これはオーガンダムにはナイショね。言ったら絶対に僕、半殺しにされちゃうから。だってあのヒトお父さんのことすっごく好きすぎてさぁ、気持ちは分からなくもないけどあれってちょっと大変なんじゃないかな?一歩間違えたら色々と危うい気がするよ。ていうか、もう既に一歩間違えちゃってる気がしなくもないけどさ。つまりそれだけお父さんのことが好きなんだって事で、えっと……僕、何の話をしてたんだっけ?」
「……例のイトが見えない私を羨ましいという話です」
答えながら、あぁ、何で彼はこんなに饒舌なのだろうと思う。喋りすぎではないだろうか、これは。一般的に、説明でも何でもないのにここまで喋り続けることが出来る彼は、割とそういう方面に才能を開花しているように思える。さて、これは『お父さん』とやらの教育のたまものなのだろうか。だったら物申したい。
苦笑しか浮かばないことにさらに苦笑が溢れ出して、最終的にはクックッと声に出して笑い出してしまった。訝しげにこちらを見られるのだが、生憎、そんな目で見られる筋合いはないと思う。
「何なら目を瞑っていてはどうですか?私が背負うか抱くかして運びますから。貴方の見た目は『人形』ですし……問題ないでしょう」
人間や異端などであったとしても、この身長なら子供と見られるだろうし、変な目で見られることもないだろう。
というか、である。
「杖には戻れないんですか?」
「はい?」
「ですから杖に。そちらの方が運びやすいと思いますが」
それなら片手で事足りる。割れ物でもないのに両手を使う気は、今のところ無い。友人であろうとも、不要ならば気を遣う気はない。両手がふさがっているよりは、片手が動かせる方が圧倒的に良い。もしもの時に対応しやすいからだ。
そういうわけなので、最もベストなのは両手の空いている現状ではある。けれども、自分には見えないイトとやらがあまりに気に入らないモノで、どうしても見たくないのならば力くらいは貸してやるべきだろう。片手くらいは彼にならいつでも貸せるくらいには、彼に対しての親しみは持っている。
「んー……いいや別に。気遣いは取っても嬉しいけど、そこまでしてもらわなくても良い」
「そうですか」
「そう。だってさ、何をやっても変わらないと思うんだよね、結果。このイトって見えるとか言うけど、実際はどっちかって言うと感じるって方だし。目を瞑ってても気配を感じられたらそれで終わりじゃない?だから、そーいう気遣いは良いよ」
「……貴方も大変ですね」
目を瞑っても視えるとは、何とも不便な。まぁ、便利すぎる能力は転じて不便になってしまうなんて、不条理だが確かに起こりえる事態ではあるけれども。
「でさ……どこに行くべきだと思う?僕の仲間たちって、どうやら三組に分かれてるみたいでね、一つは僕の対応型がいるところで、もう一つは電波さんとブラコン?みたいなヒトがいるところで、最後の場所がファザコンなヒトがいる所」
「一番近いのは?」
「っとねぇ……電波さんとブラコン?なヒトのとこ」
「ではそこへ行きましょう」
あまり遠いところに行くのもどうかと思うし。
じゃあこっち、と手を引くセラヴィーの後を歩きながら紅龍は思う。
出来れば早く彼を彼の仲間の所に預けてしまって、自分は留美の所に戻りたいのだ。セラヴィーを連れ出して付き合っていたら、思った以上に時間を食ってしまった。今頃、あのお嬢様はさぞ寂しい気分を抱いているだろうから……本当に、早く帰りたい。
「…ね、紅龍、早く帰りたい?」
「何故分かったんです?」
「顔見たら直ぐ分かるよ。分かり易いって、キミ」