擬人化100題 21．酒

酒……SDFCで酒……と考えて、二つネタが浮かんだけど、選んだのはとある片方でしたという。
選ばれなかったのは、筑紫ガンダムの方です。ほら、おひたしにするとコリコリしてて美味しくて酒のつまみに良いんだという。あれです。山菜。
でも違って、今回は甘酒で酔うヒトに関するネタで。ちょっと違うか。

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２１：酒　　



「ったくざけんじゃねーぞっ！何が擬人化だ！何が長い手足だーっ！」
「……くぅ…」
　叫んでいる約一名と、眠っている約一名とを眺め、プラスはメタスと顔を見合わせた。
　事の始まりは、マークⅡの兄たちが酒を持ってきていたことだろうか。直ぐに帰った彼らだったが、何でか酒だけは残されていて。しかもそれがジュースのビンにジュースのラベル、そしてジュースそっくりの色だったのでタチが悪い。あと……何か、作為的なモノを感じなくはないのだが。
　そして、警戒しながらも結局呑んでしまった約二名があの状態。
　ただ、問題はそこではなくて。
「……一口つけただけで、どうしてあんなになんでぇ…」
「マークⅡは甘酒で酔っぱらうヒトだから…分からなくは無いんだけど……ゼータもそう言う系だったんだね……ちょっと意外。予想と違う」
「へぇ？メタスちゃんは何て想像してたんだ？」
　自分は想像通りだったのでそれ程ゼータの様子に違和感はないのだが。
　そうではないメタスはうぅんと唸りながらイメージを固めているようだった。
「えっと……うん、何杯飲んでも変わらないように見えて、実は凄く酔ってるっていう」
「あー、そりゃありそうだ」
　確かに、それは有り得そうな結末ではあった。
「にしても、この弱さはねぇんじゃねぇか？張り合いがないぜ」
「確かにねぇ……誘うにも、ダブルゼータはりいなちゃんと外に出ちゃったし……ところでさ、私たちって飲酒可能な年齢なの？」
　唐突に問われ、グッと詰まる。
　そういえば、そういう問題もあった。だが、それは恐らく言ってはならない禁断の質問に分類される質問だろう。答えなんて出そうにない。
　だからフッと視線を逸らしつつ、酒を一口飲んで。
「…まぁ、細けぇことは気にすんなって」
「細かいのかな…？うん、別に良いけど」
　首を傾げながらも質問の不毛さは分かっていたようで、素直に頷いたメタスはゆっくりと立ち上がった。
「ん？どうかしたのか？」
「マークⅡも眠っちゃったみたいだし、毛布とか持ってきてあげた方が良いかなって」
「確かにあのまんまじゃ風邪引くぜ…」
　あぁ、そういえばゼータは過去にドライアイスの力で風邪に打ち勝ったらしいが、現状で風邪ウイルスが来たらどうなるのだろう。人間の頭がパカパカと開くわけもなく、したがってドライアイスが頭の中に入っていない状態なので、やっぱり負けるのだろうか。見てみたい気もするが、余計な厄介事も来そうな気がするから……いや、むしろそうであってくれた方が退屈しなくてすむかも知れない。
　頭の上から冷水を掛けてやったら風邪を引いてくれるだろうかと考えていると、メタスがグリンと体を捻ってこちらを見た。
「…プラス…何か物騒なこと考えてない？」
「考えてねぇよ。メタスちゃん、突然どうかしたかい？」
「少し嫌な予感がしたから。けど……そういうことならまぁ、いっか。ごめんね？」
「いいや？気にしなくて良いぜ」
　何故なら、本当に平和的でないことを考えていたから。
　読心術でも覚えているんじゃないかと内心ビクビクしつつ、毛布を取りに去っていくメタスの後ろ姿を見送る。酔っぱらいを放っておくワケには、さすがにいかないだろう。彼女が行くというのなら自分はここに残っておくべきだ。
　といっても……。
　ちらりと二人を見て、軽く溜息を吐く。
「やるこたぁねぇよなぁ…」
　完璧に熟睡している二人は、放っておいても問題を起こしそうにない。これで起きるとしたら外部からの干渉があったときくらいだろう。
　暇すぎて退屈だと頬杖を付いて眺め続け……苦笑する。
　いつも平和すぎるほど平和で、賑やかなこの場所。
　だが今は、平和すぎるほど平和で、静かな場所であっても良いかもしれない。
　あまり騒々しくして彼らを起こしてはいけないだろうと思いながら、その体勢を動かさずにプラスはそこにいて、それから……

「…あら？」
　毛布を二枚とって帰ってきたメタスは、室内の状況を見て目を丸くして、それから静かに微笑んだ。
　毛布をゼータ、マークⅡの順番に掛けて、もう一人を見てクスリと笑う。
「もう一枚、毛布を持ってこないとね」
　そう呟いて、寝ているプラスから視線を外してメタスは再び部屋を出た。

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ガン一郎とガン二郎、酒をおいていった件は意図的です。