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何がどうなってあぁなるんだろうと思わなくもないですが。
ていうか何気にクルーが裏?で頑張っている話です、多分、別の意味で。
03.丸いおにぎり
「みんなでおにぎりを作りましょう!」
「……は?」
あまりに唐突な沙慈の申し出に、刹那は間の抜けた声しか上げることが出来なかった。何でどうして、そんな突然にそんなこと。
物凄くツッコミを入れたくなったが、どうツッコミを入れて良いのかが分からない。入れるべき場所が多すぎる上に、自分はツッコミを入れるようなスキルを持っていない。というかこの場にツッコミを入れる事が出来るメンバーはいるのだろうか。
「えっと、それって……」
「ソレに関しては私から説明するわ」
困ったように笑うアレルヤに声を掛けたのは、沙慈の後ろ側にあったドアから入ってきたスメラギ。そういえば、と彼女を見て思い出す。自分たちマイスター四人が食堂にいるのは彼女に呼び出されたからだった。
あぁ、つまり。
「「「「謀ったのか(ですか)」」」」
「えへっ」
可愛らしく笑みを浮かべるスメラギに微かに殺意を抱きつつ、刹那は沙慈の目の前にある机、その上に乗っている大きい木製の容器、その中に有り得ないほど入れられた白米を見た。……実に用意周到である。
どうりで。沙慈にしてはあまりに手際が良すぎると思った。大方、スメラギに変な話でも吹き込まれたのだろう。こちらとしては酷く迷惑なことに。
とりあえず、呼び出しのアナウンスをしていたアニューまでぐるではないと信じたい。
「……で、何です、本当にやらないといけないんですか?」
「当然よ。そうでなかったら何のために呼び出したって言うの?あぁ、作り方は沙慈君に教わって頂戴。彼は日本に住んでいたから作り方は分かるはずよ。具も一通り揃えたから問題ないと思うわ」
「オイオイ……これ、アンタらだけで準備したのかよ」
山積みにされたご飯だけでなく、その周りにあった梅や鮭などといった……オーソドックスなのであろう具材を、ライルが引きつった顔で見る。
「……これ、全部?」
「いいえ?フェルトやミレイナにも手伝ってもらったわ。ラッセやイアンさんも」
「そうか……」
目の前に楽しそうに準備しているそのメンバーの姿が見えるようだった。
「あぁ、そうそう。ちゃんとマリーさんも手伝ってくれたわ」
「やっぱりですか……」
「一番張り切ってたわね。後で手伝いに来るそうよ?」
「というか、もう来てますけれど」
言葉にハッと振り返れば、最早定位置となったアレルヤの隣に、とても良い笑顔を浮かべて立っているマリーがいた。
「……何時の間に!?」
「ついさっきです。会話の邪魔をしてはいけないかと思ったんですけど……」
いや、むしろ邪魔してくれと、色とりどりの制服を着ているパイロットたちは思った。……今この時ほどマイスターの心が一つになった瞬間は無いだろう。そうしてくれたら、あるいは逃げることも出来たかもしれないのに。
「もう、そんなことは良いじゃない!さっさと始めちゃいましょ!」
そんな自分たちの思いなど露ほども知らないかのように……というか実際に知らないのだろうが、スメラギの一声でおにぎりの制作が始まった。
……のだが、刹那は、あるいは全員が忘れていた。
ここにはとにかく料理が苦手なマイスターがいたのだ。
「くっ……一体、どうやったら三角形に……!?」
「ティエリア、そこはこうした方が……」
悪戦苦闘しているティエリアである。
苦笑しながらアレルヤがつきっきりでコーチをするものの……あまり良い結果は出ていない。粉砕された米粒ではなく、ある程度でも丸い形を取るようになっただけ、まだマシではあるだろうが。
呆れながらも沙慈のお手本と同じようなおにぎりを生産し、刹那は今の事態の首謀者……の一人、あるいは本当の首謀者を見た。
「沙慈、どうして突然に」
「え?あ……カタロンの人たちに届けたいなって思って。そうしたらあの人がその……」
「コトを大きくしたのか」
「うん……」
「気にするな。いつものことだ」
ちょっとしょげている沙慈に声を掛けて、刹那は新しいおにぎりを作るべく、白いご飯の入っている入れ物の方に手を伸ばした。
まぁ、スメラギさんの介入があればこうなるのは当然の摂理…かも。