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何がどうなってこうなってしまったんだろう。
とりあえず、そうですね……アロウズに入って、あるいはアヘッドが開発されてしばらくたってみたいな。
多分、まだCBは出ていない感じ。



04.似非



「カタギリ、私は断固辞退するぞ」
「あのねぇ……だから、そういうワガママは言わないの」
「だが」
「だがも何も無し。分かる?」
 溜息を吐いて、カタギリは赤い機体を仰ぎ見た。
 最新機アヘッドの、さらに改良を施したという型。アロウズに関わっていないこの身なので性能の程は良く知っているということも無いのだが、それでも噂に聞くだけでも素晴らしい物があるのだとか。それを改良したとなれば、さらにこれは素晴らしい物だと言うことであり。それに乗ることを許可されるのはMS乗りとしてはなかなかに名誉なことなのではないだろうか。
 しかし、目の前にいるこの友人はアヘッドに乗ることを拒否し続けているのだそうだ。叔父に溜息混じりに愚痴をこぼされ、こうやって自分が引きずり出されてくるまでに強く。原因も何も分からないと言うから手に負えないらしい。
 困った物だとカタギリは苦笑した。というか苦笑しかできない。一体どうやって彼を説得すればいいのだろうか。さっきから乗るように勧めてみても、宥めてみても、何ら欲しい反応という物が返ってこない。恐らく自分以前に説得をしようとした誰かたちも同じような返され方だったのだろうし……成る程、どうりで自分にハチが回ってくるわけだ。こうなると彼は意志を曲げない。場合によっては結構面倒なことに。そしてその場合が今回のような状況なのだが。
「まずは原因を教えてくれる?」
「ふむ……カタギリになら教えても構わないか」
「……え、まさか本当に誰にも原因を教えてないの」
 確かに原因は分からない、が、それは理由を聞いた誰かたちが話すことを拒否したからだとばかり思っていたのだが。どうやら違ったらしい。
 呆れながら彼を見やると、彼は、仮面の奥から真剣な視線をこちらへ向けた。
「あまりに似ていないと思ってな」
「似てない……って何に?」
「決まっているだろう」
 何を当たり前のことを。そんな様子の彼の反応に嫌な予感を覚える。
 そう、こういう時の彼の言葉にろくな物は無いのだ。彼と出会ってからの長年の経験が何よりも雄弁にその事実を伝えている。
 出来れば耳をふさげたら良かったんだろうとは思うのだが、そうも言っていられず。
 諦観にも似た感情を抱きながら彼の言葉を待つこと数秒、彼の口から出て来たのは相変わらずな言葉だった。
「ガンダムにだ」
 相変わらずすぎて、思わず涙がこぼれそうになった。
 何だろうコレは。涙がこぼれないようにと天を仰ぎながら思う。神様、どうして彼にここまでの一途さを与えちゃったんですか。憎しみと愛情が綺麗に同居しているんですけど、これは自分にどうしろと言っているんでしょう。
 などと思っているこちらに構わず、彼はどんどんと言葉を連ねる。
「CBの裏切り者からの情報を得て作ったジンクス、あれの流れを汲んでいるのだとは知っている。だが、それにしてはガンダムに似ていなさすぎではないか?」
「いやまぁ、汲んでるだけで別物だから……」
「どうせならばガンダムそっくりにすれば良かったのだと私は思う。その方が意欲の向上に繋がっただろうに……あるいはフラッグそっくりにするべきだったな」
「それも無理だろうねぇ…」
 連邦というのは色々な陣営の人間が集まって出来た場所だ。だから基本的にはそういった陣営の色が濃く出ている物は歓迎されない。やはり四年程度しか経っていないのだ、一度根付いた敵意が無くなることはない。おそらく自分だって、ティエレンやイナクトを燃した機体を造れと言われれば少しでも躊躇うだろう。フラッグだったら別だが。
 そういった話も時と場合と状況と……あとは地位次第でどうにでもなるだろうが。いや、地位とか言うのは最終手段だけども。
「……ともかく、ちゃんとアヘッドには乗らないとダメだからね」
「むぅ……ダメなのか……」
「ダメ。叔父さんに僕が君の説得の依頼を受けるなんて思ってもみなかったよ……つまりね、それだけ現状は凄くその……うん、アレってこと」
「……そこまで言われては仕方がないな」
「聞いてくれる気になったかな?」
 観念したような彼の言葉に、ホッと安堵の息を吐く。
 が、そこで終わるなら彼は彼ではなかった。
「こうなったらあのアヘッドを私の好きなように染め上げる」
「え……染め…?……って何そのペンキ!?どこから出したんだい!?」
「全てはなるようになる」
「答えになってないよ!?ていうかまさかそれ!?」
「あぁ、塗る」
「赤の上に青とか止めてあげて本当に!」
 叫んで、それから彼をちゃんと説得するまでに要した時間は、約半日だった。




こんな馬鹿話を繰り広げてたらいいのに。

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