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 しばらくして、落ち着いたら放しにでも行こうかと思っていた対象が、何とも意外な接点を持ってこの場所にやって来たのは、グラハムとしても驚くべき事ではあった。まさか、彼もアリオスたちと同じような人形に知り合いを持っていたとは……偶然というモノは、やはりあるのだとしみじみ思う。いや、偶然と言うよりは運命の方が良いけど。そっちの方が好きだから。乙女座だし。

「……テメェは何考えてやがんだグラ公」
「大したことではないさ。単に偶然よりも運命の方が好きだと思っていただけだ」
「じゅーぶん変なことだなテメェの考えてることは!一度どっかの病院で診てもらえ!」
「何と!?私の考えは診察だけで変わってしまうモノなのか!?」
「ツッコミ入れるところはそこじゃねぇだろ!?考えてることは変じゃないとか、ここはそうやって言うところだろーがッ!」

 その声と共にツッコミの手が入った。何気に鳩尾で、結構痛い。
 こう言うところはどうやっても彼は妥協してくれない。せめてもっと別の、出来ればいたくない場所をお願いしたいのだが。

 とまぁ、そういう話は止めにしておこうか。ちらりと紅龍を見ながら思う。アリオスとの会話はカタギリとの物とは違うので楽しいのだが、それよりも今は彼らの方が大切だろう。優先順位は間違えるべきではない。
 真剣な面持ちになると、他の四名も同様に引き締まった顔になった。

「で、紅龍」
「何でしょう?」
「そちらの人形殿の紹介をしてくれないか?」

 そう、一番の優先はそれだ。
 先ほどからずっと考えていたのだ。名前を知らなければ呼ぶことも出来ないし、どういう相手か分からないとこちらとしても困ってしまう。

 だからとても重要な話のハズなのだが。
 二名を除いて、つまりは半数がガクリと肩を落としたのを認め、グラハムは首を傾げた。どうしてそのような反応を受けなければならないのだろうか。

「剣の姫、私は何か変なことを言ったかな?」
「……全部」
「ん?」
「全部、変」

 静かに、だが強く断定されて、そうかな?と今までの自分の様子を思い返してみる……が、どこも変な箇所はない。
 それを伝えると小さな溜息が返ってきた。……やっぱり解せない。

「……では、そちらの君は?」
「僕?普通だと思うよ、貴方の反応。グラ公だっけ?」
「いや、それは本名ではないよ。鈴の君が親愛を込めて付けてくれたあだ名だ」
「親愛違ぇ……」

 どこか疲れたような声が聞こえてきたが、まぁ、それについては後に触れることにして。
 グラハムは紅龍が連れてきた、もう一人の脱力しなかった相手に向かった。

「本名はグラハム・エーカーという。君の名前は?」
「僕はセラヴィー。元・杖だよ。で、ヴァーチェって言う人形の対応型で、そうだなぁ……アリオスとは一緒にイタズラをする仲?」
「それこそ違ぇ!どっちかってーと、テメェが勝手に俺を巻き込むんじゃねぇか!」
「いやぁ、アリオスって反応がイチイチ楽しくてね。特にキュリオスが絡むと凄いからなぁ……だから仕方ないんだよ。諦めたら?ほらほら、宿命とか色々あるじゃんか。つまりそーいうことで、ね?ていうことで良くない?」
「良くねぇッ!」

 元気に賑やかに話している二人。
 それを微笑ましいと思いながらも眺めていると、紅龍が、ポツリと呟いた。

「仲良し、ですか?」
「うん、とってもね!」
「絶対に有り得ねぇ!」

 受け答えは逆だったが、声の方はバッチリと重なっていて。
 グラハムは笑みを深くして彼らを見た。

 

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