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刹那の回想シーンがあのその何だか切なくて……。
そんな感じの今回の話です。
けど、視点が…刹那と言えば刹那だけどね。
15.にじゅうまる
あの人が言っていた。
俺たちは『神の使徒』であると。
神のために生き
神のために戦い
神のために死ぬ
そうあるべきなのだと。それこそが俺たちの絶対的使命であり、それ以外の全ては……自分の命さえも……些細でどうでも良い物なのだと。そして聖戦に身を投じるべきであり、そのための犠牲は躊躇わずに生産し続ける必要があると。
だから、聖戦に加わる資格を得るための試練を恐れてはいけないと。
手に持つのは自分でも使えるような小さな銃。入っているのは当然、実弾。当然だ。これから聖戦に加わるための試練を受けに行くのだから。試練のための道具がチャチな物であってはならない。全ては正確に、素速く。
ちゃんと、親を殺さなければ。
それが聖戦への第一歩。その試練をくぐり抜けることで、ようやく俺も一員となって戦うことが出来る。それは、誉れだ。
そこに疑問など無い
そこに惑いなど無い
そこに違和など無い
全ては正しい。正しく、動いている。俺が両親を殺すのは間違っていないし、他の仲間たちだってそうだ。俺たちは正しい。あの人が言っていたから。聖戦に加わるには、まず、両親を殺さなければならないと。あの人が言っていたのだから、それは何よりも正しいことなのだ。
なのに。
家に入って引こうとした引き金は止められて、見上げれば見知らぬ青年が立っていた。どこかで見たことがあるような気もするが、本当にそれだけの知らない誰か。
その青年は俺から銃を奪い取って、両親に俺を押し付けて、そのまま外へ出て行ってしまった。何か必死な表情だった気がする。
けれどそんなことはどうだって良い。
試練が、邪魔されてしまった。
それが今の俺にとって最も重大な事実だった。
こうなったら……どうしたら良いのだろう?この時点で既に神のための戦いに加わることは許可されなくなってしまうのだろうか?それともまだ間に合うのか?間に合うとして、俺はどうするべきなのか?
何も分からない。何も何も。
こう言うとき、あの人がいたら何かを教えてくれるのだろうか。
頭の中で分からない、分からないと何度も繰り返している内に、手の中にズシリとした感触が現れたのを感じる。
見下ろせば、そこには青年が取っていった銃があった。
……あぁ、何だ。簡単なことだ。
俺は銃口を持ち上げて狙いを定めた。
父の胸元へ。
そうして、撃った。
撃てば良かったんだ。
倒れていく父から視線を外し、次は母の方へと意識を向ける。
彼女の唇が「どうして」と形作ったようだったが、何を今更と呆れる。
そんな物決まっている。
「全ては神にささげる聖戦のために」
乾いた音の後、倒れる母。
こうして俺の試練は終わった。
終わったから、家を出た。
残ったのは、折り重なるように倒れた二つのモノだけ。
よくできました。
刹那は刹那でも、回想に出て来た幼少刹那の視点でした。
そういえば、まだ洗脳が解けてない彼のことはあまり書いてないなぁとか。
そもそも幼少時代が少ないですけどね…。